国へ報告する必要のない軽微な事象であるが、以下に示す「安全に係る情報」及び「トラブル発生の未然防止の観点から再発防止対策を図る情報」を登録しています。
この基準は、適宜見直しを行います。
○ 安全に係る情報
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保全品質情報基準 |
事例 |
1 |
安全上重要な機器等(※1)および常設重大事故等対処設備に変形、欠陥、ひび割れ、減肉、磨耗、ピンホール等による損傷又はその兆候があったとき |
- 他プラントの水平展開に係る点検・検査において指示を認め処置を行ったもの
- 非破壊検査で有意な指示を認め、評価等を行った上で運転を継続するもの
- 非破壊検査で有意な指示を認め、次サイクル以降の健全性に影響を及ぼす可能性があると評価され、手入れを実施することにより健全性を確保したもの
- 予定外に主要部品を取替えたもので過去に同種事象が発生していないもの
- 機器の健全性には問題ないものの、信頼性向上の観点から仕様変更を実施したもの
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2 |
保安規定違反(※2)があった時 |
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3 |
運転上の制限(※3)を逸脱したとき |
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4 |
故障により、原子炉の運転が停止したとき又は5パーセントを超える原子炉の出力変化が生じたとき |
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5 |
火災が発生したとき |
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6 |
作業、操作により設計、運用上考慮されないような重大な影響が発生する可能性があった時 ここでいう「重大な影響」とは、プラントの「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能に影響があった場合を言う |
- 「止める」機能に影響があった場合
例)
- 燃料の誤挿入
- ホウ素希釈時の外部電源喪失
- 制御棒引抜監視装置の動作不良
- 臨界近接時の制御棒価値ミニマイザの動作不良
- 「冷やす」機能に影響があった場合
例)
- 誤ったCRD閉止板の取り外しによる原子炉水位の低下
- 誤った核計装系(SRM、IRM、SRNM、LPRM)の引き抜きに伴う原子炉水位の低下
- 給水加熱性能に影響する可能性のある給水加熱器内のひび
- 逃がし安全弁の誤開放に至る可能性のある事象
- ミッドループ運転時に弁の誤操作や手順の不備等で、プラントへの影響は生じなかったが、原子炉の水位が低下した場合
- 「閉じ込める」機能に影響があった場合
例)
- 低温過加圧事象(高圧注入系誤起動と加圧器逃がし弁の動作不良)
- 原子炉建屋を負圧に保つことが必要な時期に、二重扉が同時に開放となった場合
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○ トラブル発生の未然防止の観点から再発防止対策を図る情報(「安全に係る情報」に該当しない場合に参照し、設備の重要度や再発防止対策(他プラントへの水平展開の可能性を含む)の有無を勘案します)
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保全品質情報基準 |
事例 |
7 |
トラブル発生の未然防止の観点から再発防止対策を図るとき |
- 主配管、主要弁、ポンプなど重要な部位、項目が点検リストから漏れていた場合
- 管理区域内において、放射性物質が機器の故障、誤操作等により漏えいした場合(エリアモニタ、ダストモニタ等の放射線モニタの指示値が有意に変動した場合、管理されていない状態で漏えいした放射性物質に含まれる放射能量が3.7×106Bqを超えるおそれがある場合)
例)
- 原子炉水位用計装配管貫通部修理で安全処置のミスにより漏えい(堰外、145リットル、3.5×106Bq)
- 原子炉冷却材浄化系ポンプ入口配管フランジ部の漏えい(堰内、20cc、ダスト放射線モニタの有意な指示値の上昇)
- 炉内(炉内に持ち込まれる可能性がある場合を含む。)、使用済み燃料プール、サプレッションプール等での異物発見、回収があり、異物の発生状況やルースパーツの観点から、他社に注意を喚起すべき場合
例)
- 主蒸気ラインプラグ取り外し作業中にチェーンリングが炉内に落下
- 給復水系のサンプリングノズルが折損
- 高圧炉心スプレイ系スパージャノズルのデフレクタが脱落
- 安全上重要な機器等および常設重大事故等対処設備に係る再発防止対策の検討が必要なもの
a. 運転中の安全上重要な機器等および常設重大事故等対処設備に有意な状態変化(機器の損傷やその兆候に該当すると判断しかねる状態)が見られ、点検や取替等を実施した結果、定期的な点検内容・頻度見直し等の再発防止対策を実施したもの
例)
- 余熱除去ポンプモータに異音が発生し、振動値は点検すべき閾値よりかなり低かったが、念のため分解点検を実施したところ、消耗品交換で対応できたものの、再発防止対策として定期点検時の点検方法を変更
b. 安全上重要な機器等を含む設備の定期点検において、損傷した箇所が安全上重要な機器等の範囲から外れていても、損傷する原因・環境は共通で、安全上重要な機器の類似箇所について健全性確認を必要とする等の再発防止対策を実施したもの(常設重大事故等対処設備にも同様に適用する)
例)
- 安全上重要な機器に該当しない範囲の残留熱除去機器冷却海水系配管のライニングに剥離が見られ、要因が運用管理(弁の中間開度)によるものであり、類似の安全上重要な配管についても同様な運用管理は実施しないこととした
- プラント運転及び運転継続に影響を及ぼす可能性がある機器に異常(動作不良,停止,損傷など)が発生し定期的な点検内容・頻度見直し等の再発防止対策の検討が必要な場合
例)
- 蒸気発生器圧力伝送器のコンデンサの絶縁抵抗低下に伴い、圧力指示変動「工安系パーシャル作動」警報発生
- 高圧注入系の定例試験時に微量な蒸気漏えい
- タービン動原子炉給水ポンプのハウジングの一部が損傷
- 余熱除去クーラ下部フランジボルトの締め付け不足により微量の漏えい
- 給水加熱器出入口水室仕切りふたの締付けボルトが、締付け不足により脱落
- タービン動主給水ポンプ用ブースターポンプ出口配管と給水配管接続部が溶接欠陥により漏えい
- 接地線を使用しない誤った設計となっていたため、主要変圧器フランジ部より漏えい
- 原水タンクを空気の取入口が無い状態で水抜きしたことにより、タンクの一部が変形
- 給水逆止弁の弁蓋・弁箱とボルトとの熱膨張・収縮の追従差により、フランジから極微量のにじみ
- 原子炉冷却材再循環ポンプ メカニカルシールのシール機能の低下
- 低圧タービンのグランド蒸気がフランジ面に浸入し、パッキン効果が薄れ漏えい
- タービン潤滑油ドレンガード管の振動等により経年的に疲労し、当該管のサポートパイプ閉止栓からにじみ
- 原子炉給水ポンプ メカニカルシールのシール機能の低下
- 給水系のドレン配管取付座の高サイクル疲労により漏えい
- 非常用ディーゼル発電機の定例試験時に調速装置の不良により過速度トリップ
- 雨水で碍子が絶縁低下し、非常用母線の地絡・短絡発生
- タービン動主給水ポンプ保安装置試験にて、遮断子押さえバネの欠損により過速度トリップ装置の動作不良
- 非常用予備発電装置機能検査にて、片系の非常用ディーゼル発電機が始動空気制御弁の動作不良により起動失敗
- 原子炉冷却材浄化系ポンプ出口逆止弁のロッド位置調整用ワッシャの損傷
- 主給水ポンプの増速機に異音が確認され、分解点検の結果、歯車に浸透探傷検査指示
- 給水逆止弁のスピンドルワッシャが流体振動により損傷
- 燃料取替機のクレーン垂直方向位置検出器の伝達軸破損により位置検出できず、使用済燃料プール底面に着座
- タービン駆動給水ポンプグランド蒸気排気管エルボ部、復水ポンプミニマムフロー配管オリフィス下流部等のエロージョン
- 給水加熱器ドレンタンク常用水位調整弁とレデューサ溶接線部のエロージョン・コロージョンにより漏えい
- 可動小型中性子束検出器1本の所在不明に係る調査のため、原子炉起動を一時延期
- 主タービンの非常用調速機油圧トリップ試験で、動作油供給ラインノズルの位置ズレにより過速度トリップ装置の動作不良
- 燃料装荷開始以降に発生した中性子源領域計装の動作不良(保安規定上機能要求がある機器)
- 放射線管理、放射性廃棄物管理上の不適合が発生した場合
例)
- 放射線監視機能や計測機能が監視、計測不能になる可能性がある場合など機能に影響がある場合
- 放射線業務従事者の計画外の被ばくがあった場合
- 放射性物質の内部取り込みがあった場合
- 放射線管理区域(飛び地、一時的な放射線管理区域を含む)への入退域を、手続きをおこなわず実施した場合
- 放射線業務従事者が管理区域へ10時間を超えて入域した場合
- 可搬型重大事故等対処設備に異常(動作不良、停止、損傷など)が発生し定期的な点検内容・頻度見直し等の再発防止対策の検討が必要な場合
- 法令・規制要求事項で定められている点検を実施できていないなど、保全計画等に不備が認められた場合
例)
- 高圧ガス保安法に基づく点検が未実施であった場合
- 電気事業法施行規則に定める時期までの定期事業者検査の未実施が判明した場合
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解説
※1 安全上重要な機器等 |
原子力規制委員会が定める(安全上重要な機器等を定める告示)原子炉施設の安全を確保する上で重要な機器及び構造物、および福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画に定めたもの |
※2 保安規定違反 |
原子力規制庁制定の「発電用原子炉施設保安検査実施要領(平成26年6月9日制定)」による違反1〜3 |
※3 運転上の制限 |
保安規定で定める運転上の制限(LCO:Limiting Condition of Operation)は、この範囲内で運転していれば十分に安全を確保できる設備の機能的能力又は性能水準を示したものです。すなわち、LCOを満足していない状態(LCO逸脱)となった場合は、安全水準が劣化している可能性はあるものの、LCO逸脱ということだけで直ちに安全上の重大な問題を生じていることを意味するものではありません。保安規定は、個々のLCO逸脱に対して「要求される措置」を定めているものであり、それぞれに定められた期限内に「要求される措置」を講じることを求めています。 なお、LCO逸脱により安全上の重大な問題を生じている場合は、保安規定に従い、直ちに原子炉の停止が必要とされています。 |