通番 | 12772 | 報告書番号 | 2017-原電-M003 Rev.3 |
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情報区分 |
保全品質情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
事象発生日時 | 2018年 01月 22日 | 事象発生日時(補足) | 事象を確認、国に報告した日 |
会社名 | 日本原子力発電株式会社 | 発電所 | 東海第二発電所 |
件名 | 運転期間延長認可申請書及び設置変更許可申請の審査資料における燃料有効長頂部の寸法値について | ||
国への法令報告根拠 | なし | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
評価不要 |
事象発生時の状況 |
1.経緯 2017年11月24日に原子力規制委員会に提出した「東海第二発電所運転期間延長認可申請書(発電用原子炉施設の運転の期間の延長)」(以下「延長認可申請書」という。)に関する原子力規制庁ヒアリングが、平成30年1月11日に実施された。この場において、延長認可申請書の「添付書類一 特別点検結果報告書」内の「東海第二発電所 原子炉圧力容器特別点検要領書」に記載されている原子炉圧力容器の炉心領 域の超音波探傷試験(以下「UT」という。)の試験探傷部位(「原子炉圧力容器底部より5494mm〜9152mm」(炉心有効高さとして3658mm))が、工事計画認可申請書(以下「工認」という。)の記載値である燃料有効長3708mmより短いことについて指摘を受けた。
このため、特別点検にて実施した原子炉圧力容器の炉心領域のUTの試験範囲について、平成30年1月12日からその根拠を調査していたところ、1月19日、UTの試験範囲として引用した図面の炉心有効高さに関する数値が、工認本文の記載値と異なることを確認した。 また、1月15日、原子力規制庁より、東海第二発電所新規制基準に基づく設置変更許可申請の安全審査における、有効性評価に関するまとめ資料と補足説明資料に記載された原子炉水位L1及びL8の燃料有効長頂部(以下「TAF」という。)からの高さが異なることを指摘された。 このため、関連資料を調査した結果、1月19日、補足説明資料に記載されたTAFの値が工認本文の記載値から算出される値と異なることを確認した。 2.調査結果 (1)特別点検におけるUTの試験範囲が、工認記載の炉心有効高さと異なった原因の調査 上記1.経緯での質問を踏まえ引用した図面を調査した結果は、以下のとおりであった(ここで、『 』は図面の記載を示す。ただし、単位は一部本資料で付記、「in」はインチを表す)。 ・UTの試験範囲は、製作メーカが作図し当社の第二種図面*1として登録されている原子炉圧力容器の図面(以下「製作メーカ図面」という。)より引用していることを確認した。 ・UTの試験範囲は、この製作メーカ図面に記載された『BOTTOM OF ACTIVE FUEL』(BAF)である『5494.3mm(216.31in)』及び『TOP OF ACTIVE FUEL』(TAF)である『9152mm(360.31in)』を引用していることを確認した。この値から計算すると、燃料有効長は3658mm(144in)となり、工認本文の記載値である3708mmと異なる。 ・原子炉圧力容器の図面としては、製作メーカ図面とは別に、設計メーカが作図し当社の第一種図面*1として登録されているものが存在するため、これを確認したところ、BAFは『216.31in』(換算し小数点以下四捨五入し5494mm)であり、TAFは『362.31in』(同9203mm)であった。また、この第1種図面には『ACTIVE FUEL』(燃料有効長)として『146in』(同3708mm)の記載があり、工認本文の記載値である「炉心有効高さ」と等しいことを確認した。 ・工認本文の記載値である「炉心有効高さ」は、工認の燃料集合体構造図に記載された「燃料有効長」の値と一致し、正しい値であることを確認した。また、工認の添付図面のうち、原子炉本体の断面図には「炉心有効高さ」として「3708」の記載があり、整合する。 ・なお、当社は、UT実施メーカ(設計メーカと同一)から、設計メーカ図面に記載されているTAFの値を用いてUTの試験範囲を記載している文書を、検査計画の説明書として受け取っていた。しかしながら、当社は製作メーカの図面をUT実施メーカに提示したことから、これに基づいてUTの要領書に試験範囲が設定され、実施されていた。 以上により、特別点検におけるUTの試験範囲は、誤ったTAFの値が記載されていた製作メーカ図面のTAFとBAFの値が用いられていることを確認した。 *1:第1種図面:発電所の運転・保守管理上重要な図面であり、原図は当社が管理する。各部署で共有すべき重要な情報を記載。基本図面(構内配置図、系統図、原子炉構造図等)、展開接続図、単線結線図、電源負荷リスト、計装ブロック図、インターロックブロック線図等。 第2種図面:第1種図面以外の図面であり、主にメーカから提出され担当部署にて確認した図書類。機器の構造図、計算書、取扱説明書、機器仕様書等。 (2)安全審査の有効性評価の補足説明資料において、TAFの値を工認本文の記載値より低い値とした原因の調査 前述の1.経緯での指摘を踏まえ調査した結果は、以下のとおりであった。 ・補足説明資料は、東海第二発電所の非常時運転手順書をもとに作成した。 ・非常時運転手順書に記載されたTAFの値は9152mmであった。一方、工認本文の記載値から計算されるTAFの値は9203mm(BAF5494mm+炉心有効高さ3708mm)であり、非常時運転手順書に記載されたTAFの値に誤りがあることを確認した。 3.保安規定違反 また、上記以外にも誤ったTAF位置データを用いて、原子炉施設保安規定第27条*2及び第77条*3に定める要件から一部逸脱していることから、同規定に抵触しているとした。 上記報告を元に、平成29年度第4回の保安検査において事実関係の確認が行われた結果、以下に示す保安規定の各条を満足していなかったとして、平成30年5月16日に保安規定違反(違反3)と判断された。 ・第27条、第107条 各条で求めている原子炉水位計が所定の機能を発揮するために必要な判定基準を定め、それに基づき校正や検査が行われていない。 ・第3条 7.1業務の計画(3)c)を満足しておらず、長期にわたり不適切な状態が放置されており品質管理システムに一部問題があった。 *2:「計測及び制御設備」電気・制御グループマネージャーは、定検停止時に当該水位計のチャンネル校正を実施し、発電長に通知すること。発電長は、原子炉の状態が運転及び起動において、当該水位計が動作不能でないことを指示により確認すること。 *3:「異常時の措置」及び「添付1 原子炉がスクラムした場合の運転手順基準(第77条関連)」原子炉がスクラムした場合等の異常が発生した場合は、添付1に示す「原子炉がスクラムした場合の運転操作基準」に従って実施すること。 |
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事象発生箇所 |
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原因調査の概要 |
(本事象に伴う直接原因調査等の報告や水平展開等は、延長認可申請や設置変更許可申請の審査等個別に実施しているため、それらについては、添付資料にすべて添付したのでそちらを参照願う。本報告においては、これらの根本原因分析について取りまとめることとする。) 1.情報収集 根本原因分析により組織要因を追及するため、関連資料の収集による状況把握、関係者のヒアリングによる事象発生当時の状況及び現所 員に対するアンケートから組織要因の抽出を行った。
(1)資料の収集 直接原因分析結果を踏まえ、関連資料の収集を実施した。 本事象の直接原因は、直接原因分析結果が示しているとおり、8×8燃料に変更した昭和50年当時の設置変更許可が適切に管理されていなかったこと、並びにその後に実施した供用期間中検査(以下「ISI」という。)や特別点検において記録確認を行った「自主点検における炉心領域の超音波探傷検査(以下「UT」という。)」でのTAF位置データの確認過程において、改めてその根拠の確認が行われず、7×7燃料のTAF位置データが正しいと長きにわたり使用を続けてきたことである。 従って、関連資料の収集にあたっては、建設時(特に、昭和50年の設置変更許可)における許認可資料を整理し、取りまとめることとした。 また、平成26年度に実施した「自主点検における炉心領域のUT」では、UT実施メーカから正しいTAF位置データに基づく検査範囲を提示されていたにも関わらず、旧来の7×7燃料のTAF位置データに基づいて検査範囲を設定したことは、品質マネジメントシステム(以下「QMS」という。)上の重大な問題であることから、UT実施関連資料についても収集した。 <収集した資料> ・直接原因分析結果 (東海第二発電所 運転期間延長認可申請書及び設置変更許可申請書の審査資料における燃料有効頂部の寸法値について(平成30年2月5日 日本原子力発電株式会社) (平成30年2月13日 第548回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料:「東海第二発電所 設置変更許可申請書及び審査資料における燃料有効頂部の寸法値に係る原因分析結果」(資料1−5)) ・水平展開に係る分析結果 (平成30年3月8日 第555回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料:「東海第二発電所 設置変更許可申請書及び審査資料における燃料有効長頂部の寸法値に係る対策及び水平展開について」(資料2−1)(資料2−2)) (平成30年4月5日 第562回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料:「東海第二発電所 運転期間延長認可申請における燃料有効長頂部の寸法値に係る対応のうち数値の妥当性確認結果について」(資料4−1)(資料4−2)) ・設置許可、設置変更許可関連資料(変遷) ・工事計画認可申請書(建設工認)関連資料(変遷) ・自主点検に係るUT実施関連資料 (2)ヒアリングによる情報収集 上記「(1)資料の収集」に示したとおり、「自主点検における炉心領域のUT」における事象は、QMSの観点から重大な問題であることから、資料の収集に加えて、平成26年度当時の自主点検のUT実施における関係者を中心にヒアリングによる情報収集も行った。 また、一連のTAF位置データの不整合は、昭和50年に設置変更許可が適切に変更管理されなかったことに端を発することから、当時の設置許可申請の関係者についても、可能な限りヒアリングを行い、当時の状況について把握することに努めた。 (3)アンケート 組織要因の特定に資するため、現状の発電所所員の業務に対する意識を把握するため、アンケートを実施し、情報を収集することとした。 2.根本原因分析にあたっての方針 (1)組織要因に起因する不適合行為の整理 根本原因分析を実施するにあたって、直接原因分析及び水平展開に係る分析において問題が認められた複数の事象に対して、組織要因に起因する不適合行為を整理した。 ○問題が認められた事象 @自主点検における炉心領域のUT A当該水位計の校正 ○組織要因に起因する不適合行為 @異なったTAFの寸法を用いて、炉心領域のUT実施範囲を計画し、検査が行われた。 A異なったTAFの寸法を用いて、原子炉内の水位(水頭圧)が設定され、それに基づいて校正が行われた。 ○該当保安規定(注) @[第3条、第107条] A第3条、第27条、第107条 注:保安規定違反として判定された該当条文番号を示す。なお、[ ]で示した「自主点検における炉心領域のUT」に係る保安規定条文番号は、保安規定違反に係る協議のなかで、保安規定違反と考えた条文番号を示す。 3.根本原因分析 根本原因分析にあたっては、上記「1.情報収集」に記載したとおり、平成26年当時の「自主点検における炉心領域のUT」の関係者を中心にヒアリングによる調査等を行うとともに、収集した資料の調査結果を基に時系列を作成し、問題点の抽出などをSAFER手法を用いて実施し、組織要因を抽出した。 (1)根本原因分析の実施 1)時系列に沿った事実確認と問題点の抽出 「自主点検における炉心領域のUT」及び「当該水位計の校正」に関して、詳細な時系列を作成し、各業務プロセスの中から問題点を抽出した。 「自主点検における炉心領域のUT」 「自主点検における炉心領域のUT」に関する業務の計画や業務の実施にあたっては、UTの実施範囲(炉心位置に対応するRPVの側壁の位置)の確認を行う。 実施範囲の確認にあたって使用した第二種図面には、7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データがREF.(参考値)として記載されていた。 このため、ここで業務プロセス上の問題となる可能性があるものは、以下の3点である。 1−@:使用した第二種図面に7×7燃料の有効長から求まるTAF位置データが記載されていたこと。 1−A:業務の計画や業務の実施にあたり、第二種図面のREF.(参考値)と記載のあるTAFの値を使用したこと。 1−B:第二種図面に本来の値ではない数値があることに気づかなかった(使用を継続した)こと。 1−@:使用した第二種図面に7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されていたこと。 使用した第二種図面は、原子炉圧力容器(以下「RPV」という。)製造図面であり、RPV製造当時の燃料は7×7燃料であった。このため、当該第二種図面には、7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されていた。 しかし、RPV製造には、TAF位置データは参考値でしかなかったため、製造後に8×8燃料に変更になったとしても、RPV製造図面である当該第二種図面を改定する必要はなかった。 従って、当該第二種図面には、7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データがREF.(参考値)として記載されていた。 このため、「使用した第二種図面に7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されていたこと」自体には業務のプロセス上の問題はない。 1−A:業務の計画や業務の実施にあたり、第二種図面のREF.(参考値)と記載のあるTAFの値を使用したこと。 使用した第二種図面には、溶接線や肉盛り部等が記載されていたため、「自主点検における炉心領域のUT」で検査対象となる部位を把握しやすく、RPVに関する必要な情報が記載されていた。 従って、UTの計画立案や実施にあたって当該第二種図面を使用した。 一方で、発電所の運転・保守管理上重要な図面であり、当社が原図を管理し、各部署で共有すべき重要な情報が記載されている第一種図面の基本図面には、8×8燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されている。 このため、第二種図面にはTAF位置データにREF.と記載されていたにもかかわらず、東海第二発電所(以下「発電所」という。)が「第二種図面のREF.(参考値)と記載のあるTAF値を使用したこと」は業務プロセス上の問題がある。 従って、本件について背後要因を確認することとした。 なお、発電所には図面から数値を引用する際にREF.とその他の数値を区別して使用する慣習やルールがなかったという直接原因の対策として、工事の計画時等に図面などからの数値を引用する際にREF.と記載のある数値を用いる場合には、根拠のある数値を確認(複数図書のチェック、メーカへの再確認等)し使用することを社内規程に定めることにした(水平展開に係る分析結果の資料参照)。 1−B:第二種図面に本来の値ではない数値があることに気づかなかった(使用を継続した)こと。 1−Aに示したとおり、当該第二種図面にはRPVに関する詳細な情報が記載されている。以前から実施している検査範囲が類似のISIにおいても当該第二種図面を使用しており、検査にも合格していた。 このため、「自主点検における炉心領域のUT」において、当該第二種図面を使用することに疑問を感じなかった(1−Aのプロセス上の問題に帰結)とともに、誤りがあると考えもしなかった。 また、「自主点検における炉心領域のUT」の実施前の平成26年6月に点検内容及び点検に伴う作業の留意事項について審議する「工事等に係る技術検討会」(以下「工技検」という。)が開催された。 工技検の資料には第一種図面と第二種図面の両方が添付されていたが、議事録より、TAF位置データについて議論されていないことを確認した。 このことからも、発電所は第二種図面のTAF位置データの信ぴょう性について疑うことがなかったと考えられる。 このため、発電所が「誤った数値が記載されている第二種図面の使用を継続したこと」は業務プロセス上の問題がある。 従って、本件について背後要因を確認することとした。 さらに、平成26年7月にUT実施メーカが提出した技術連絡票には、正しいTAF位置データが記載されていたが、前述のとおり、それまでに実施していた第二種図面を用いて計画したISIの計画が承認され、検査も実施・合格していたため、異なるTAF位置データが記載された技術連絡票が提出されたことに気づかなかったと思われる。 このため、発電所が「UT実施メーカから正しい数値が提示されたことに気づかず、数値の見直しが行われなかったこと」は業務プロセス上の問題がある。 従って、本件についても背後要因を確認することとした。 「当該水位計の校正」 「当該水位計の校正」に関する業務の計画や業務の実施では、RPV内外の水頭圧差からRPV内の水位が所定の範囲内にあることを確認する。 この水頭圧差は、設計メーカの計算式を用いて算出することになるが、その計算式内には、7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが使用されていた。 このため、ここで業務プロセス上の問題となる可能性があるものは、以下の2点である。 2−@:設計メーカの計算式に7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されていたこと。 2−A:設計メーカが例示した計算式に誤りがあることに気づかなかった(使用を継続した)こと。 2−@:設計メーカの計算式に7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データが記載されていたこと。 発電所に保存してある当該水位計の水頭圧差を計算した図書は、7×7燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データで計算されており、昭和50年に発行されている。 一方、7×7燃料から8×8燃料に変更された時期も昭和50年である。 このため、当該図書が、提出元及び提出先でどのように処理されたか、部署間でどのようなコミュニケーションがあったのかを設計、建設及び運転開始初期の当時の関係者に聞き取りを行ったが、いずれの人も覚えていないとの回答であった。 しかしながら、8×8燃料の燃料有効長から求まるTAF位置データで修正が行われなければならなかったことは事実である。 原因としては、「建設時において、設置変更許可における燃料寸法の変更情報が、関連する部門に適切に共有されなかった。あるいは、共有されたとしても、関連する部門において、業務に支障のない情報として、使用する図面の修正に至らなかった」ことが考えられる。 なお、後述する、現QMS規定における、本店−発電所における変更管理の実効性や現在のQMSに基づく図面管理の運用においては、設計図の変更が必要な情報は関係部門間で共有することになっており、このような状況には至らないと考えられる。 このため、本件は業務プロセス上の問題があるが、約40年前のことであり、推測の域を出ないことから背後要因の確認はしないこととした。 一方、上述のとおり、計器校正のための入力基準値(本件では燃料寸法)の変更情報が関連する部門に「適切に共有されなかった」あるいは、「共有されていたとしても修正に至らなかった」という原因を排除することは有効である。 このため、計器校正の「入力基準値」の管理を保修室が行っているが、「入力基準値」は動作すべき「設定値」に直接影響することから、安全保護系の「設定値」と同等の扱いとし、「設定値」を管理している安全管理室が「入力基準値」も一括で管理するという改善が有効であることを確認したため、社内規程「警報設定値及び保護継電器整定値管理要領」にルール化し運用する。 2−A:設計メーカが例示した計算式に誤りがあることに気づかなかった(使用を継続した)こと。 当該水位計の校正は、差圧伝送器に差圧の模擬信号を入力し、水位指示値が許容範囲内にあることを確認することで行われる。 従って、校正にあたって、担当者が確認する数値は圧力の単位(kPa)を有する数値であった。このため、担当者は直接TAF位置データを目にすることはなかった。 さらに、水位計に関連する工事等がなければ、前回の校正に使用した差圧の模擬信号の値をそのまま踏襲してきており、設定根拠書にさかのぼって数値の妥当性を確認することはなかったことから、誤りに気づかなかった。 しかしながら、発電所が「設計メーカが例示した計算式の妥当性に気づかずに使用を継続したこと」は事実であり、業務プロセス上の問題がある。 このため、本件についても背後要因を確認することにする。 なお、平成16年に当該水位計を含め4つの水位計の改造工事が行われ、水位設定の見直しも行われた。 改造工事は、水位計の配管のルーティングの変更であり、その際、改造工事により変更となった数値(基準水位)については設計メーカ計算式を確実に変更しているものの、当該工事の範囲外であるTAF位置データの変更はしなかった。 この業務プロセスにおいて、設計メーカ計算式を変更する際にTAF位置データの間違いに気づかなかった(あるいは、確認しなかった)ものの、担当工事の範囲については、変更管理が確実に行われており、このこと自体には業務プロセス上の問題はない。 以上の「自主点検における炉心領域のUT」及び「当該水位計の校正」に関する詳細な時系列の各業務プロセスの中から抽出された以下の問題点について背後要因を確認することとする。 問題点1:第一種図面を使用せず、第二種図面のREF.(参考値)と記載のあるTAF値を使用したこと 問題点2:誤った数値が記載されている第二種図面の使用を継続したこと 問題点3:UT実施メーカから正しい数値が提示されたことに気づかず、数値の見直しが行われなかったこと 問題点4:設計メーカが例示した計算式の妥当性に気づかずに使用を継続したこと 2)背後要因図の作成 時系列から抽出された4つの問題点を頂上事象として背後要因図を作成した。 背後要因図は、「1.情報収集」にも示したとおり、関連資料や「自主点検における炉心領域のUT」実施における関係者のヒアリングによる情報のみならず、根本原因分析が組織要因を特定することを狙いとしていることから、要因の特定に資するため、現状の発電所所員の業務に対する意識を把握するために実施したアンケートも含めて作成した。なお、アンケートは、上司との関連、メーカとの関係、業務にあたっての要求事項に対する確認、並びに図書管理の状況等を設問として行った。 3)アンケート結果からの考察 発電所所員の業務に対する意識を把握するために実施したアンケートの結果には、「上司・上位職は経験豊富であり、自分は言われたとおりにやっていればよい」等、本来、所員一人ひとりが、使用するデータのルーツを確認する意識を持つ等の本来あるべき姿と異なる回答が2割程度認められた。 また、図書管理については、多くの所員(9割)が「業務を行うために必要な要求事項や根拠の情報が様々な図書・資料に散らばっていて分かりにくいため、確認しにくい」と回答しており、図書管理に問題があるとの結果が得られた。 |
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事象の原因 |
根本原因分析の結果 上記の分析に基づき、組織要因(根本原因)と考えられるものを以下のとおり抽出した。 【根本原因1】 業務の計画及び業務のレビューにおいて、過去から使用していた数値、もしくは設備変更のない範囲の数値に対する設計検証・妥当性確認がぜい弱 業務の計画や業務の実施にあたり、「自主点検における炉心領域のUT」及び「当該水位計の校正」とも過去に実施してきた類似 作業のISIや校正が「問題なく実施され、合格してきた」という認識だけで「適切」と考え、過去から使用していた数値、もしくは設備変更のない範囲の数値を確認することをしなかった。
今回のTAF位置データの不整合について、平成30年1月11日に実施された延長認可申請に関する原子力規制庁ヒアリング及び1月15日に新規制基準に基づく設置変更許可申請の安全審査における資料に記載された原子炉水位L1及びL8のTAFからの高さが異なることを原子力規制庁から指摘されるまで気づくことはなかった。 業務のレビューの段階では、UT実施メーカが正しいTAF位置データを記載した技術連絡票を発電所に提出したにも関わらず、上述のとおり発電所は、過去に実施したISIが「問題なく実施され、合格してきた」という認識だけで「適切」と考え、UT実施メーカが提示してきた数値の違いに気づかなかった点、あるいは工技検において、正しいTAF位置データが記載されている第一種図面の基本図面を添付しておきながら、UT実施範囲という重要なパラメータの誤りに気づかなかった点も妥当性確認を行う具体的な意識・活動が不足していたためである。 従って、過去から使用していた数値、もしくは設備変更のない範囲の数値を検証あるいは妥当性を確認できる仕組みが必要である。 この仕組みができれば、アンケートで多くの所員(9割)が「業務を行うために必要な要求事項や根拠の情報が様々な図書・資料に散らばっていてわかりにくいため、確認しにくい」という点についても改善が図れると考えられる。 【根本原因2】 当社が原図を管理し、各部署間で共有すべき重要な情報を記載している第一種図面の取扱いが適切に行われていなかった。 第一種図面には正しいTAF位置データが記載されている。つまり、第一種図面は、正確かつ最新であった。 しかしながら、溶接線や肉盛り部、母材などの試験に必要な情報があるということで第二種図面(今回の場合は、RPV製造図面)の作成過程やその後の過程を考えずに使用し、各部署間で共有すべき重要な情報が記載されている第一種図面を使用しなかった。 従って、【根本原因1】により仕組みができ、第一種図面を常に正確かつ最新化できても、それを有効に活用しなければ意味をなさない。このため、作業にあたっては、はじめに第一種図面、その次に第二種図面の順に使用することを徹底する必要がある。 なお、今回、保安規定違反の対象となった「自主点検における炉心領域のUT」及び「当該水位計の校正」と類似の事象として、水平展開に係る分析結果の資料に示したように、平成4年のSRNMの採用時に第一種図面のうち基本図面を改正しなかった件がある。 これも、「自主点検における炉心領域のUT」と同様に、第一種図面の基本図面を使用することなく業務が遂行できたため、当該第一種図面の変更を行わず、QMS施行以降も長年にわたって変更を行わなかったという事象である。 本件については、現在のQMSにおける図書管理及び上述の図書管理を行う関係グループへの周知が可能となり類似の事象の発生が防げると考える。 また、仮に、類似の事象が発生した場合にも【根本原因1】に示した「過去から使用していた数値、もしくは設備変更のない範囲の数値を検証あるいは妥当性を確認できる仕組み」を構築することにより、長年にわたって変更が行われないということはないと考えられる。 |
原因分類 | 管理不良>その他管理不良(図書確認不足) |
事象の種別 |
時間依存性のない事象(偶発事象を含む)
火災に該当しない事象 |
添付資料 |
根本原因分析結果一式(3,839KB) 直接原因分析結果1(1,829KB) 直接原因分析結果2(574KB) 水平展開に係る分析結果1(2,775KB) 水平展開に係る分析結果2(7,736KB) 水平展開に係る分析結果3(182KB) 水平展開に係る分析結果4(4,411KB)
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プレスリリース |
発生時運転モード | 燃料交換 | 発生前の電気出力 | 0[MW] |
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発見の方法 | 机上検討・記録評価 | ||
発電所への影響 | なし |
外部への放射能の影響 | なし | ||
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保安規定違反 |
区分3 平成29年度第4回の保安検査において事実関係の確認が行われた結果、以下に示す保安規定の各条を満足していなかったとして、平成30年5月16日に保安規定違反(違反3)と判断された。 ・第27条、第107条 各条で求めている原子炉水位計が所定の機能を発揮するために必要な判定基準を定め、それに基づき校正や検査が行われていない。 ・第3条 7.1業務の計画(3)c)を満足しておらず、長期にわたり不適切な状態が放置されており品質管理システムに一部問題があった。 |
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検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
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運転上の 制限外への移行 |
なし | ||
自動で作動した安全系 | なし | 手動で作動した安全系 | なし |
同発電所で発生した 同様事例 |
なし |
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その他 |