| 通番 | 10196 | 報告書番号 | 2008-東京-T035 Rev.1 |
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| 情報区分 |
トラブル情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
| 事象発生日時 | 2009年 02月 25日 04時 03分 | 事象発生日時(補足) | 事象発生時間 |
| 会社名 | 東京電力株式会社 | 発電所 | 福島第一発電所1号 |
| 件名 | 起動操作中の福島第一原子力発電所1号機における原子炉の手動停止について | ||
| 国への法令報告根拠 | 実用炉規則19条の17第2号 | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
0+ |
| 事象発生時の状況 | 調整運転のため、起動操作を行っていた福島第一原子力発電所1号機において、平成21年2月21日、4時3分、原子炉圧力高などの警報が発生し、それまで開いていたタービンバイパス弁が閉まっていたことを確認した。このため、原子炉の状態を確認したところ、原子炉圧力が約7.1MPaまで上昇していたため、4時7分、保安規定第38条で定める「運転上の制限」を満足していないと判断した。 その後、制御棒の挿入操作ならびにタービンバイパス弁を開く操作を行い、また、主蒸気逃がし安全弁が自動で開いたことから、原子炉圧力が保安規定に定める6.91MPa以下になったため、4時25分に「運転上の制限」の逸脱からの復帰を判断した。また、原子炉出力が約13%から約0%になった。 現場を確認したところ、タービンバイパス弁駆動部の連結部が外れていることが確認された。 原因調査を行うため、8時49分、制御棒を全て挿入し原子炉を手動で停止した。 なお、本事象による外部への放射能の影響はない。 |
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| 事象発生箇所 |
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| 原因調査の概要 | 1.状況調査結果 1−1.当該連結部について (1)当該連結部の状況について 外れが確認された当該連結部は、ねじによりロッド(雄ねじ側)とクレビス(雌ねじ側)を連結する構造となっている。 また、ロッドにはロックナットが取り付けられており、その取り付け位置から、ロッドは約29mmクレビスに挿入されていたものと推定された。 ロッドの外観点検を行ったところ、ロックナットよりクレビス側の部分(以下、「損傷部」という)のねじ山がつぶれ、変形していること、ねじ山の表面に光沢があることが確認された。一方、ロックナットより反クレビス側(以下、「残存部」という)のねじ山に異常は確認されなかった。さらに、ロッドの端面を確認したところ、製品番号を示す刻印が記載されていること、機械加工の痕があること、クレビス内には折損片が存在しなかったことが確認された。 以上から、クレビスからロッドが脱落した理由は折損したためではなく、ロッドのねじ山がつぶれたためであると考えられた。 なお、クレビスのねじ山にはロッドの損傷部のようなつぶれは確認されなかったものの、ねじ山の表面に光沢が確認された。 (2)当該連結部の点検等の実績について 当該連結部に関する点検および取替え実績等について調査を行った結果、第2回定期検査時にTBV駆動機構の当該連結部と同様なロッドとクレビスによる連結部(当該連結部を含め、全部で20箇所)の全てのロッドのねじ部およびクレビスついて取り替えていたことが確認された。 当該連結部は取り替え以降、ロッドとクレビスの取り外しを伴う点検や補修作業は行われていないことが確認された。 ロッドとクレビスの取り外しを伴う点検を行ってこなかった理由は、当該連結部において重要な部位は摺動部である接続部のピンとピン穴であり、ロックナットで固定されたロッドとクレビスのねじ部は、通常運転の環境においては損傷する可能性がないと考えていた。 また、第9回、11回、15〜19回、21回〜25回の定期検査に当該連結部のクレビスと下流側駆動機構との接続部を止めるピンとピン穴の寸法測定を行っていたが、異常は確認されなかった。 なお、TBV駆動機構の当該連結部と同様なロッドとクレビスによる連結部(当該連結部を含め、全部で20箇所)のうち6箇所については、第15回定期検査にクレビス部を取り替えていたことが確認された。 1−2.事象発生前後のTBVの制御および動作状況について 本事象において開いていたTBVが全閉したことから、事象発生前後におけるTBVの制御および動作の状況について調査を行った。 (1)プラントの状況について TBVの動作および制御の状況を含む事象発生前後のプラントの状況について、運転員の日誌および関係者(運転管理部、保全部)へ聞き取り調査結果から、以下のことが確認された。 a.事象発生の前日(平成21年2月24日)の5時9分に主タービンを起動し、発電機の並列・解列(10時33分〜18時41分)を行ったが、TBVの動作および制御の状況に異常は確認されなかった。 b.19時17分に主タービンのバックアップ過速度トリップ試験※(通常のプラント起動時に行う定例試験)を行い、正常にトリップ動作したことから、19時24分に主タービンのトリップリセット操作を行ったところ、主蒸気管圧力制御装置の制御盤において、電気式主蒸気圧力制御装置(以下、「EPR」という)および機械式主蒸気圧力制御装置(以下、「MPR」という)の制御ランプが点滅していることが確認された(通常はEPRにより制御されるため、EPRの制御ランプが点灯し、MPRの制御ランプは消灯している)。 なお、この時、TBVの動作および制御の状況に異常は確認されなかった。 c.19時30分に、中央制御室の制御盤内において、制御油圧力が低下したことを検知する圧力スイッチのリレー接点が開閉動作を繰り返していること(以下、「チャタリング」という)が確認された。 その際には、TBVの制御および動作の状況に異常は確認されなかった。 d.19時34分に、「EPR PNL995 LIGHT FAILURE」(EPRシステム盤軽故障)の警報が発生し、EPRシステムI系が自動で切離しとなった。EPRの制御盤ではシステムI系の「システムI EPR切離中」「システムI EPR重故障」「システムI EPR位置検出異常」表示ランプが点灯していた。この時、TBVの開度計の指示は約44〜46%で変動していた。 なお、EPRはシステムが3重化されており、システムI系が隔離されても残りのII系、III系により制御可能な設計となっており、この2系によりTBVが制御されていた。 e.その後、確認された不具合の調査のため、主タービンの回転速度を降速したところ、圧力スイッチのリレーのチャタリングが確認されなくなったが、再び昇速するとチャタリングが再発することが確認された。また、EPRの制御ランプの点滅も継続していたことから、さらに不具合の調査を行うため、主タービンを停止することとし、21時10分に手動トリップ操作を行った。 f.翌2月25日1時頃に、現場にて主蒸気管圧力制御装置を確認したところ、EPRの出力を伝達するロッドが上下方向に繰り返し動作していること、およびEPRまたはMPRの出力をTBV等の駆動機構に伝達するシャフト(以下、「トルクシャフト」という)が時計/反時計方向(周方向)に繰り返し回転動作していることが確認された。 このため、これらの動作の変動量等を測定したところ、変動量は約0.5mmで、変動周波数は約14Hzであった。 g.TBV開度計の指示の変動、EPRの制御ランプ点滅について監視を行いながら、不具合の調査を行っていたが、4時3分に「原子炉圧力高」、「逃がし安全弁開」等の警報が発生したため、TBVの開度を確認したところ、全閉状態となっていた。 h.原子炉圧力を制御するため、TBV(No.1)をテストスイッチにより開閉操作を行っていたが、TBV(No.1)が開動作しなくなった。 このため、TBV(No.2)〜(No.8)をテストスイッチにより順次、開操作したところ、TBV(No.3)は開表示ランプが点灯したものの、それ以外のTBVは開表示ランプが点灯しなかった。 ※バックアップ過速度トリップ装置(機械式)の動作を確認する試験。 タービンが何らかの要因により定格回転数(1500rpm)以上に昇速された際、過速度トリップ装置(機械式)が動作しなかった場合に、バックアップ過速度トリップ装置にてタービンがトリップすることを確認する試験。 (2)運転パラメータ等の調査結果 事象発生前後における運転パラメータ(TBV開度、原子炉圧力等)ならびに制御系に関連するパラメータ(主蒸気管圧力制御装置の制御信号等)について、チャートならびに過渡現象記録装置の記録を確認したところ、以下のことが確認された。 a.2月24日5時9分の仮並列のためのタービン起動から19時24分に行った主タービンのトリップリセット操作までの間、主蒸気管圧力制御装置の制御信号は、原子炉圧力に追従して適切に発信され、プラントは、その信号により制御されていたため、原子炉圧力、原子炉出力、原子炉水位は安定していた。 b.同日19時24分に行った主タービンのトリップリセット操作の終了時とほぼ同じタイミングで、「TBVトータル開度」、TBV駆動機構のTBVリレーの動作位置を示す信号(以下、「EPR_TBV位置」という)、EPR制御盤からEPR駆動機構に発信されている開度要求信号(以下、「EPR弁開度指令」という)、「タービン制御油圧力」が脈動し始めていた。 また、「EPR_TBV位置」、「EPR弁開度指令」の変動は、翌2月25日4時3分にTBVが全閉となるまでの間、継続していた。 なお、その間も、原子炉圧力、原子炉出力、原子炉水位は安定して制御されていた。 c.4時3分に原子炉圧力が上昇した際に、「EPR弁開度指令」、ならびにこの指令に基づく「EPR_TBV位置」の動作状況は100%まで上昇し、一方で、TBVの実際の開度を示す「TBVトータル開度」が0%となっていた。 また、その後の「EPR弁開度指令」および「EPR_TBV位置」は、制御棒挿入操作およびTBV手動開操作等に伴う主蒸気管圧力の変動に応じた信号を出力していた。 以上の調査の結果から、主タービンのトリップリセット操作後に何らかの異常が発生したことにより、TBVおよびTBV駆動機構の動作、「EPR_TBV位置」、「EPR弁開度指令」、「タービン制御油圧力」が変動した可能性があり、最終的に当該連結部の外れに至ったものと考えられた。 当該連結部が外れたことにより、TBVの全閉に至り、原子炉圧力が上昇した。その際、EPRからTBVを全開させる信号が正常に出力され、この信号に追従してTBV駆動機構もTBVを全開させる方向に正常に動作したが、当該連結部が外れていたため、TBV駆動機構の動作はTBVへ伝達されず、TBVは全閉状態のままとなったものと推定された。 2.原因調査結果 2−1.当該連結部の外れに関する原因調査結果 当該連結部が外れた原因について、要因分析表に基づき調査を行った。 (1)製品不良について a.ロッド、クレビスのねじ山形状不良 ロッドおよびクレビスの残存部のねじ山に対し、歯科用印象材を用いて型取りを行い、長手方向断面をミクロ観察した結果、ロッドならびにクレビスともねじ山形状に不良(有意な変形)は確認されなかったことから、損傷したねじ山形状についても不良(有意な変形)はなかったものと推定された。 b.ロッド、クレビスのねじサイズ不一致 ロッドおよびクレビスの残存部ねじ山に対し、ねじゲージを用いて、はめ合い状況を確認した結果、サイズが一致しており、プラントメーカーの設計ねじサイズであったことから、損傷したねじ山についても、サイズの不一致によりねじ山の損傷が生じることはないものと推定された。 c.ロッド、クレビスの材料組合わせの不備 ロッドおよびクレビスの残存部について、材料成分分析を行った結果、ロッドの材質はJIS SS 400を満足していること、また、クレビスの材質はASTM A193 B16をほぼ満足していることから、材質に問題はないと考えられた。 また、ロッドよりもクレビスの方が硬い材質を用いていることが確認されたが、類似プラントの同設備のロッドとクレビスと同等の硬さであったことから、材料組み合わせに不備はないものと推定された。 d.ロックナットのねじ山形状不良 ロックナットについても同様に、ねじ山形状、サイズ、材料の確認を行った結果、ねじ山の形状に不良(有意な変形)は確認されなかったこと、材質はASTM A563 grade Aの規格値を満足していたこと、およびねじサイズはプラントメーカーの設計と一致していたことから、ロックナットのねじ山形状不良(有意な変形)の可能性はないと推定された。 (2)組立不良について a.ロックナットの締付け不足 (a)ロックナットのクレビス側の端面について、ミクロスコープおよび走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」という)を用いて、断面ミクロ観察、SEM観察により当たり面の状況を調査した結果、ロックナットのクレビスとの当たり面に接触傷が確認され、さらに接触傷が確認された箇所に、表面の潰れ、肌荒れ、割れおよび剥がれが確認された。 当たり面に確認された接触傷は、ロックナットとクレビスが接触を繰り返したこと(フレッティング)により発生したものと推定された。 当該部は、点検実績から第2回定期検査時にロッド取替が行われていたことから、ロッドの組立時に、ロックナットの締め付けが不十分であった可能性が推定された。 (b)ロックナットの締め付け不足によるロッドのねじ山への影響を調査するため、当該連結部を模擬したロッドとクレビスのモックアップ品を用いて、加振試験を行った結果、ロックナットを締め付けた状態では、ロッドのねじ山に摩耗の兆候は確認されなかったが、ロックナットの締め付け不足の状態では、ロッドのねじ山が摩耗することが確認された。 (c)ロックナットが締め付けられていた状態でロックナットに緩みが発生するかどうか、ロックナットを緩ませる要因として軸力変化、ローリング運動、円弧運動の緩みトルクについて評価した結果、緩みトルクは十分小さい値であり、ロックナットが締め付けられていれば、ロックナットは軸力変化、ローリング運動、円弧運動により緩むことはないことが推定された。 以上の調査結果から、ロックナットの締め付けが不十分な場合、ロッドのねじ山が摩耗する可能性があると推定された。 b.ロッドねじの挿入不足 ロッドのねじ部を、当該連結部と同じ長さ(約29mm)で挿入した状態で加振試験を行った結果、ロックナットが十分締め付けられている場合、摩耗は生じないことから、ロッドの挿入不足により摩耗が生じた可能性はないと推定された。 c.ロックナットの締付け過剰 ロックナットおよびロッドのねじ山に対し、歯科用印象材を用いて、型取りを行い、断面をミクロ観察した結果、ねじ山表面および組織に異常は確認されなかったことから、ロックナットの過剰な締め付けはないと推定された。 d.ロッド、クレビスのかじり クレビス(損傷部)のねじ山に対し、歯科用印象材を用いて型取りを行い、断面をミクロ観察した結果、かじりの跡は確認されなかったことから、ロッドとクレビスのかじりはないと推定された。 e.割りピンの未挿入 割りピンはロッドの位置決めを目的として使用され、ロックナットを使用しているものについては、ロックナットが廻り止めの役割を担っている。 TBV駆動機構のうち、当該連結部の他、当該連結部のように摺動する類似の連結部の10箇所について、割りピンの挿入状況の確認を行った結果、割ピンが挿入されている連結部と挿入されていない連結部があり、割ピンが未挿入の連結部についてはロッドのねじ山に摩耗は確認されなかった。 以上のことから、割りピンが未挿入であっても、ロックナットが締め付けられていれば、ロッドとクレビスが緩むことはないと推定された。 (3)経年的な損傷について a.疲労・腐食・摩耗 (a)ねじ山の外観観察およびSEM観察結果 ロッド(損傷部)のねじ山をSEM観察した結果、ねじ山中央に摺れ痕が確認され、ねじ山先端に延性破面の特長であるディンプルが確認されたものの、疲労破壊の特長であるビーチマークやストライエーション、腐食は確認されなかった。 また、ロッド(損傷部)のねじ山表面について、外観観察を行った結果、光沢が見られる部分(以下、「光沢面」という)や光沢が見られない面(以下、「黒色面」という)が確認され、表面皮膜をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(以下、「EDX」という)により化学成分分析を行った結果、損傷部に有意な腐食・酸化は確認されなかったが、黒色面は光沢面に比べ酸化鉄が多く確認されたことから、黒色面は本事象発生以前に形成されたものと推定された。 以上のことから、ロッドねじ山の摩耗は本事象発生前から徐々に進行して、本事象において損傷に進展したものと推定された。 (b)堆積物の観察結果 クレビス内の外観観察を行った結果、クレビス内に堆積物が確認された。 その堆積物を調査した結果、金属片と粒子状の堆積物であった。 金属片と粒子状の堆積物を採取して、EDX分析およびX線回折を行った結果、金属片はクレビスとロッドの成分と一致したことから、割りピン用の穴を加工したさいの切削片と推定された。 また、粒子状の堆積物はロッドの成分と一致したことおよび一部に酸化鉄が確認されたことから、ロッドの摩耗粉が経年的に堆積したものと推定された。 (c)ねじ山形状調査 ロッドのねじ山の寸法を周方向の4位置(0°,90°,180°,270°;レバー側を0°とし、反時計方向に回転させた角度)にて測定した結果、0°と90°の位置で摩耗が大きく、ロッドとクレビスの間隔が広くなっていたこと、180°と270°の位置は比較的摩耗が小さいことを確認した。 また、クレビスのねじ山の摩耗については、周方向、軸方向ともに偏りが小さいことを確認した。 ロッドは上部と下部の連結部にて、それぞれレバーと連結されているが、0°方向は下部連結部のレバー側と、90°方向は上部連結部のレバー側と同じ方向になっていることを確認した。 ロッドは垂直に上下方向に動作する際、上部、下部でそれぞれ連結されたレバー側の方向に偏りやすいため、ロッドのねじ山はレバー側の方向である0°と90°方向で摩耗がより進行しやすかったものと推定された。 以上のことから、0°と90°方向のねじ山の摩耗が進行するにつれて、次第に偏摩耗の状態となり、比較的残存していた180°と270°方向のねじ山が最終的に延性破壊に至ったものと推定された。 (d)偏摩耗での加振試験結果 ロッドのねじ山に偏摩耗が確認されたことから、ねじ山の偏摩耗を模擬したモックアップ品を用いて加振試験を行った結果、約49万回の振動を加えたところロッドがクレビスから外れることが確認された。 この振動回数は、本事象で確認された振動の周波数が14Hzであったことから、時間に換算すると約9.7時間であることを確認した。 この時間は、本事象においてTBV開度等の指示の変動が始まった主タービンのトリップリセット操作の時点から、TBVが全閉となる時点までの時間が約8時間であり、ほぼ一致していたことから、今回のプラント起動時において、既にロッドのねじ山は偏摩耗が進んだ状態であったと推定された。 (e)ロッド(損傷部)のねじ山摩耗量の評価 ロッドのねじ山の摩耗は本事象発生前から徐々に進行したものと推定されたため、第2回定期検査から本事象発生まで(23サイクル)の運転時間で、ロックナットの締め付けがない状態での摩耗量を評価した結果、運転時間に応じてロッドのねじ山の摩耗量が徐々に大きくなる結果となり、実機で測定された摩耗量とほぼ同様の摩耗量になったことが確認された。 (4)突発的な損傷について a.過大応力について ロッドのねじ山を一度に損傷させるために必要な加重(せん断破壊応力)を評価した結果、約6.2×105N(約60t)以上必要であることがわかった。 また、事象発生時のプラントデータから、当該連結部に加わる最大荷重を求めた結果、約2.0×104N(約2t)であり、せん断破壊応力に比べ十分小さいことから、過大応力によるねじ山損傷の可能性はない。 また、弁調整試験の結果より固着等の異常が無かったことから、固着が原因で突発的な過大な応力が発生した可能性はない。 以上の調査結果から、第2回定期検査時に当該連結部のロッドのねじ部とクレビスを取り替えた際、ロックナットが締め付け不足となり、この状態でTBVの開閉操作を実施してきたため、本事象発生前からロッドのねじ山の摩耗が徐々に進行・進展し、偏摩耗の状態になったものと推定された。 また、今回のプラント起動時における主タービントリップリセット操作に伴うTBVの動作の際、残存するねじ山の一部が削り取られ、当該連結部に大きなガタが生じ、その後の事象発生時に当該連結部のロッド(損傷部)のねじ山が延性破壊に至り、当該連結部が外れた可能性が推定された。 2−2.振動の原因調査結果 当該連結部に振動が発生した原因について、要因分析表に基づき調査を行った。 (1)TBV連結ロッド上流側からの振動伝達について a.制御信号の変動について (a)EPR制御装置の故障 EPR制御盤の単体試験を行った結果、制御装置に故障は確認されなかった。 また、弁組み合わせ特性試験において、振動の入力信号としてEPR入力信号の周波数変化やステップ信号を入力した結果、出力信号に異常がなかったことから、EPR制御装置の故障による制御信号の変動からTBV連結ロッドに継続的な振動は発生しない。 (b)EPR/MPR干渉 弁組み合わせ特性試験において、EPRとMPRの制御の干渉により、制御信号が変動するか確認した結果、EPRとMPRの切り換えは正常に切り替わっており、制御信号の変動につながるような挙動は確認されなかったことから、EPRとMPRの干渉よる制御信号の変動からTBV連結ロッドに継続的な振動は発生しない。 b.TBV駆動機構の偏差動作による自励振動発生について (a)TBV駆動機構の応答状態の変化(静特性試験) 定期検査時に行う弁調整試験と同じ弁調整試験を行った結果、駆動機構各部の応答に異常は確認されなかった。 (b)TBV駆動機構の応答状態の変化(弁組み合わせ特性試験) TBVリレーに発生した振動の振幅を評価したところ、当該連結部は約10mmで振幅していたことから、その状態を模擬するため、当該連結部がガタつくよう加工したロッドを用いて、弁組み合わせ特性試験(EPR周波数応答試験)を実施した結果、周波数14Hzの入力信号に対して、TBVリレーが応答し、TBVリレーの振れが大きくなることが確認された。 一方、ガタなしのロッドを用いて、同様の試験を行った結果、周波数の上昇とともにTBVリレーの応答は徐々に減衰し、14Hz付近より高い入力信号に対してはTBVリレーが応答しないことが確認された。 以上のことから、当該連結部にガタがある場合は、TBV駆動機構に振動が発生することが推定された。 なお、EPR周波数応答試験以外の弁組み合わせ試験では、ガタなしロッド、ガタありロッドでの試験結果に異常は確認されなかった。 (c)TBV駆動機構の応答状態の変化継続(シミュレーション解析) TBV駆動機構のシミュレーションモデルを構築し、TBVリレーに一時的な外乱の模擬信号を入力してシミュレーションを行った結果、当該連結部にガタがない場合はTBVリレーの一時的な振動が継続しないことが確認された。 一方、ガタがある場合にはTBVリレーの一時的な振動が自励振動となって継続することが確認されたことから、TBV駆動機構の自励振動が発生・継続することが推定された。 c.制御油圧の脈動について 事象発生時の過渡現象記録装置に記録されたデータを確認した結果、主タービンを手動トリップさせた時点で制御油圧の脈動は停止しているため、制御油圧の脈動によりTBV駆動機構の振動が継続する可能性がないことを確認した。 (2)TBV連結ロッド下流側からの振動伝達について a.蒸気振動について (a)主蒸気流量の脈動 事象発生時の過渡現象記録装置に記録されたデータを確認した結果、主蒸気流量は脈動していないため、主蒸気流量の脈動による振動が発生、継続することはない。 (b)蒸気の弁体通過による振動 蒸気の弁体通過による振動について確認した結果、蒸気の弁体通過による振動は高サイクル振動(数百Hz程度)であるため、蒸気の弁体通過による振動がTBV駆動機構に伝達し、継続することはない。 b.サポートゆるみについて TBVのサポートの外観点検を行った結果、ゆるみや外れなどの異常は確認されなかった。 c.配管振動について 蒸気流による配管振動について確認した結果、蒸気流による配管振動は高サイクル振動(数百Hz程度)であるため、蒸気配管の配管振動による振動が駆動機構に伝達し、継続することはない。 (3)周辺設備の振動との共振について TBV駆動機構およびTBV駆動機構付近の制御油配管の固有振動数について調査した結果、TBV駆動機構およびTBV駆動機構付近の制御油配管が持っている固有振動数は今回確認された14Hzの振動と比較すると小さな値であること、およびTBV駆動機構周辺の潤滑油機器の振動の周波数とも異なっていることから、周辺設備との共振が発生する可能性はないことが確認された。 以上の調査結果から、当該連結部に発生したガタが今回のプラント起動操作における主タービンのトリップリセット操作時に大きくなったため、TBVリレーの振動が発生・継続し、TBV駆動機構の自励振動(約14Hz)が発生・継続したものと推定された。 なお、ロッドとクレビスの外れの原因調査から、当該連結部に発生したガタは、第2回定期検査以降、ロックナットの締め付け不足によりロッドのねじ山の摩耗が徐々に進行・進展したものと推定された。 2−3.原因メカニズム 以上の調査結果から考察し、原子炉熱出力に5%を超える変化が生じたメカニズムは以下のとおりと推定された。 (1)第2回定期検査時に当該連結部のロッドのねじ部とクレビスを取り替えた際、ロックナットが締め付け不足となった。 (2)ロックナットの締め付け不足の状態でTBVが開閉したことにより、ロッドとクレビスのねじ山の接触面にすべりが生じ、ロッドのねじ山が徐々に摩耗した。 (3)TBVを開閉させるため、ロッドは垂直方向に上下動作するが、ロッドの上下で連結されているレバーの方向に偏るため、レバー側(0°〜90°)のねじ山の摩耗がより進行し、偏摩耗の状態となった。 (4)今回のプラント起動時における主タービントリップリセット操作に伴うTBVの動作の際、残存するねじ山の一部が削り取られ、当該連結部に大きなガタが生じた。 (5)当該連結部に生じた大きなガタにより、TBV駆動機構に自励振動が発生し、継続した。 (6)TBV駆動機構に自励振動が発生・継続したことにより、当該連結部が外れた。 (7)当該連結部の外れにより、TBVが全閉したため、原子炉圧力が上昇した。 (8)原子炉圧力を低下させるため、制御棒挿入操作を実施し、原子炉熱出力に5%を超える変化が生じた。 2−4.その他、確認された不具合の発生メカニズム (1)EPR制御ランプの点滅 2月24日の19時24分から4時3分までEPR制御ランプ(EPRがTBVを制御している時に点灯)の点滅を確認している。 運転パラメータ及び現場確認結果から、TBV駆動機構を動作させているTBVリレーが開閉動作を繰り返しており、TBVリレーを介して接続されているトルクシャフトも時計/反時計回転動作(周方向)を繰り返していたと考えられた。 通常、EPR制御ランプは、EPRによりトルクシャフトを制御している場合に、EPR制御ランプ用リミットスイッチ接点がONすることで点灯するが、TBVリレーの開閉動作に追従してトルクシャフトの時計/反時計回転動作の繰り返しにより、リミットスイッチがON/OFFを繰り返したため、EPR制御ランプが点滅したものと推定された。 なお、MPRの制御ランプも点滅していた時があったが、EPRと同様のメカニズムによるものであると推定された。 EPRならびにMPRの制御ランプ用リミットスイッチについては、定期検査にて点検し問題のないことを確認しておりまた、事象発生後に点検を行った結果、問題がないことが確認された。 (2)「EPR軽故障」警報の発生について 24日の19時34分、主タービンバックアップ過速度試験後、「EPR軽故障」ならびに関連警報の発生が確認された。 EPRは、I、II、III系からなる三重化された制御システムであり、ここにTBVの開度信号をフィードバックしている。 このI、II、III系の制御システム各々の演算結果に相違が生じると、自己診断機能により異常と判断されたシステムを切り離し、「EPR軽故障」警報を発するが、今回は、TBVが開閉動作を繰り返したことにより、システムIのTBV開度制御信号の演算結果と他のII、III系の演算結果に差が生じTBVの実開度が追従していないと判断されたため、当該警報が発生したものと推定された。 なお、システムIにおいては、制御盤点検及び静特性試験を行った結果、異常はないことが確認された。 (3)AOP自動起動用圧力スイッチリレーのチャタリングについて 24日の主タービンバックアップ過速度試験後、主タービンの回転数の変化にあわせて、19時30分から19時51分、および20時11分から20時14分まで断続的に、AOP自動起動用圧力スイッチリレーがチャタリングしていることを確認しているが、過渡現象記録装置の記録から、制御油圧に脈動が生じたため、AOP圧力スイッチがチャタリングしていたことが確認された。 (4)TBV(No.1)のテスト用電磁弁の弁棒折損について 事象発生時のテストスイッチによるTBV(No.1)開閉操作の際、TBV(No.1)が動作不能となったことから当該テスト用電磁弁を点検調査した結果、以下のことが確認された。 a.当該テスト用電磁弁を分解したところ、電磁弁の弁棒にピン穴が2箇所あいており、そのうちの1箇所のピン穴で弁棒が折損していたことが確認された。 また、折損したピン穴は電磁弁のクレビスにねじ込まれていないところに位置していたことが確認された。 b.折損したピン穴は電磁弁の弁棒の軸中心からずれており、折損部の破面の断面積が偏った形状であることが確認された。 c.折損部破面のSEM観察を行った結果、破面の一部に細かい凹凸が見られ、疲労破壊の特長であるストライエーションおよびディンプルが確認された。 なお、その他のTBV(No.2)〜(No.8)のテスト用電磁弁についても点検調査を実施した結果、以下のことが確認された。 a.操作スイッチにより問題なくTBVが動作すること、弁の「開」状態を示すランプが点灯するまでの時間は定例試験時と同じく約5〜6秒であることを確認した。 b.外観目視検査およびねじ部の浸透探傷検査を行った結果、異常が認められなかったことから、健全であることを確認した。 c.ピン穴は電磁弁のクレビスにねじ込まれている1箇所のみであることが確認された。 以上のことから、ピン穴に経年的に繰り返し引張り応力が作用することでき裂が発生し、さらに繰り返し引張り応力が作用することによりき裂が進展して延性破壊が起こり、テストスイッチによるTBV(No.1)開閉操作の際、弁棒が折損したため、TBV(No.1)が動作不能となったものと推定された。 なお、今回折損した弁棒は、ピン穴が一つである新品の弁棒と取り替えた。 また、事象発生時にTBV(No.2)およびTBV(No.4)〜(No.8)の開表示ランプが点灯しなかったのは、聞き取り調査の結果、TBVが動作し、ランプが点灯するために必要な時間(5〜6秒)をかけて操作スイッチを操作していなかったことによるものと推定された。 3.類似箇所の点検結果 TBV駆動機構のうち、当該連結部の他、当該連結部のように摺動する類似の連結部10箇所について点検を行った結果、1箇所についてロックナットが緩んでおり、ロッドに摩耗の兆候が確認されたが、ロックナットの摩耗は確認されなかった。 残りの9箇所については、ロックナットは締め付けられており、摩耗は確認されなかった。 4.事象発生時の逃がし安全弁動作について 今回の事象発生時に原子炉圧力が上昇したため、逃がし安全弁が動作しているが、同じ圧力の動作設定値*であるスクラム信号は発信されなかった。 この点について調査した結果、逃がし安全弁の動作ならびにスクラム信号とも動作設定値は7.27MPaであるが、計器誤差を見込んだ場合でも確実に動作するよう動作設定値より計器誤差を考慮したセット値を採用しているからであり、逃がし安全弁の動作セット値は7.17MPa、スクラム信号の発信セット値は、7.24MPaであった。 しかしながら、原子炉圧力の異常上昇時においては原子炉圧力制御(逃がし安全弁動作)よりも反応度制御(スクラム)を優先する方が望ましいことから、動作設定値の根拠や他号機の動作設定値との整合性等を踏まえつつ、逃がし安全弁及びスクラム信号に関する動作設定値の見直しについて検討を行い、その結果について第26回定期検査後の起動への反映を目指す。 なお、検討結果が反映されるまでは、万が一、スクラム信号の発信に先立ち逃がし安全弁が動作した場合は、手動にてスクラムする運用とする。 *設置許可申請書、工事計画書、保安規定に記載されている原子炉保護系の動作に関わる設定値 |
|---|---|
| 事象の原因 | 第2回定期検査における当該連結部の取り替え時にロックナットの締め付けを十分行わなかったこと、および駆動機構の定期的な分解点検を実施していなかったためにロックナットの締め付け不足を発見できなかったことから、当該連結部のロッドねじ山が経年的に摩耗して、最終的に外れに至ったものと推定された。 |
| 原因分類 |
設備不備>施工不完全
保守不備>保守不完全 |
| 事象の種別 |
時間依存性のない事象(偶発事象を含む)
火災に該当しない事象 |
| 再発防止対策 | 当該連結部のロッド、クレビス、およびロックナットについては新品と交換を行い、ロックナットはトルク管理を行った上で確実に締め付けを行う。TBV駆動機構については、今後、8サイクルに1回に分解点検を行こととする。 なお、動作した逃がし安全弁については、念のため、予備品と交換を行う。 |
|---|---|
| 水平展開の検討 | 要 |
| 添付資料 |
概略系統図 1F1概略系統図 (23KB) 概略系統図 1F1連結部詳細 (40KB) 状況図 1F1事象の概要 (40KB) 状況図 1F1推定メカニズム (102KB) |
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| プレスリリース |
| 発生時運転モード | 起動 | 発生前の電気出力 | |
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| 発見の方法 | 運転操作 | ||
| 発電所への影響 | 手動停止 | ||
| 発電停止時間 | 0時間 | ||
| 外部への放射能の影響 | なし | ||
|---|---|---|---|
| 保安規定違反 | なし | ||
| 検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
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| 運転上の 制限外への移行 |
保安規定 第38条 (原子炉圧力) 原子炉の状態が運転及び起動において、原子炉の圧力は、下記で定める事項を運転上の制限とする。 原子炉圧力 1号機 6.91MPa 調整運転のため起動操作を実施していたところ、原子炉圧力高の警報が発生し、それまで開いていたタービンバイパス弁が閉まっていた。このため、原子炉の状態を確認したところ、原子炉圧力が約7.1MPaまで上昇していた。(LCO逸脱を判断) その後、CRの挿入、タービンバイパス弁の開操作、および主蒸気逃がし安全弁の動作もあり原子炉圧力が6.91MPa以下となった。(LCO逸脱から復帰を判断) |
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| 自動で作動した安全系 | 自動減圧系 | 手動で作動した安全系 | なし |
| 同発電所で発生した 同様事例 |
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|---|---|
| その他 |