通番 | 9701 | 報告書番号 | 2008-北海道-T001 |
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情報区分 |
トラブル情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
事象発生日時 | 2008年 04月 09日 | 事象発生日時(補足) | 工認板厚を満足しないと判断 |
会社名 | 北海道電力株式会社 | 発電所 | 泊発電所2号 |
件名 | A、B−蒸気発生器1次冷却材入口管台溶接部での傷の確認について | ||
国への法令報告根拠 | 実用炉規則19条の17第3号 | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
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事象発生時の状況 |
泊発電所2号機(加圧水型軽水炉,定格電気出力57万9千キロワット,定格熱出力165万キロワット)は,平成20年3月13日からの第13回定期検査中,平成19年11月16日付NISA文書「蒸気発生器出入口管台溶接部の内表面の点検実施について」(NISA−163b−07−3)に基づき,渦流探傷試験*1(以下,「ECT」という)を実施した。その結果,1次冷却材入口管台(以下,「入口管台」という)溶接部に おいてA−蒸気発生器(以下,「SG」という)3箇所,B−SG10箇所に有意な信号指示が認められた。なお,1次冷却材出口管台溶接部については,各SGとも有意な信号指示は認められなかった。
ECTで有意な信号指示が認められた箇所について,超音波探傷試験*2(以下,「UT」という)を実施した結果,A−SGで1箇所,B−SGで1箇所に傷の深さが評価できる有意な信号指示が認められた。 これらの傷の深さは,A−SGで約7mm,B−SGで約5mmと評価され,当該部の板厚約78mmから傷の深さを差し引いた板厚(A−SG約71mm,B−SG約73mm)が,電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載の75mmを下回ると判断した。 <時系列> 3月31日 〜 4月 3日 A,B−SG入口管台ECT実施 4月 3日 〜 4月 9日 A,B−SG入口管台UT実施 4月 6日 〜 4月 9日 A,B−SG出口管台ECT実施 *1:渦流探傷試験(ECT) 高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接触することで対象物に渦 電流を発生させ,対象物の欠陥付近に起こった渦電流の変化から欠陥を検出 する方法。 *2:超音波探傷試験(UT) 超音波が物体中を伝搬し,欠陥等不連続部で反射する性質を利用して,物体 内部の欠陥を検出する方法。 |
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事象発生箇所 |
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原因調査の概要 |
原因調査SG入口管台溶接部の傷に対する調査を,要因分析FT図に基づき実施した。なお,傷の観察にあたり,A−SGNo.1指示部については,型取観察*3を実施し,B−SGNo.5 指示部については,型取観察およびスンプ観察*4を実施した。 *3:型取観察表面状態をフィルムに転写し,表面の加工状態を確認すること。 *4:スンプ観察損傷部の表面を磨いた後,表面にフィルム等を貼り付け写し取り,これを顕 微鏡で観察すること。
(1) 型取観察結果 a.A−SGNo.1指示部全体的に,グラインダ施工*5(研削)の上にバフ施工*6の仕上げ跡が見られ,割れの部分を含めて,明瞭なグラインダ施工(研削)の跡が認められた。 b.B−SGNo.5指示部全体的に,グラインダ施工(研削)の上にバフ施工の仕上げ跡が見られ,割れの部分においては,グラインダ施工(研磨)と考えられる仕上げ跡が認められた。 *5:グラインダ施工溶接部表面等に対して,グラインダ(円形の砥石を高速で回転させ,材料や工具を研削または研磨する工作機械)により、表面仕上げを行うこと。バフ施工と比較して目は粗い。 *6:バフ施工溶接部表面等に対して,工具に取り付けた円形上のサンドペーパー等(バフ)により,表面仕上げを行うこと。グラインダ施工に比較して目は細かい。 (2)スンプ観察結果 B−SGNo.5指示部についてスンプ観察を行った。 a.割れは600系ニッケル基合金の周溶接部および肉盛溶接部に認められ,ステンレス鋼のセーフエンドや入口管台のステンレス内張り部には達していなかった。 b.長さ約1.8mmから約5.0mmの軸方向割れが複数認められ,全長は約7.6mmであった。 c.割れの周辺に,直径約7mmの手直し溶接と思われる溶接の跡が認められた。 d.割れはデンドライト境界*7に沿っており,これまでに国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている1次冷却材環境下における応力腐食割れ*8(以下,「PWSCC」という)と同様の様相が認められた。 *7:デンドライト境界溶接部では、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト結晶)ができ、その結晶組織の境界のことをデンドライト境界という。 *8:1次冷却材環境下における応力腐食割れ(PWSCC)1次冷却材の環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ(材料,環境および応力の3要素が重なって発生する割れ)。なお,スンプ観察の結果B−SGNo.6指示部の割れも検出されており,B−SGNo.5指示部の割れと同様にPWSCCの様相が認められた。 (3)製造・運転履歴調査結果 a.製造履歴調査泊発電所2号機のSGは,昭和60年7月〜平成元年3月に製造されており,当時の試験検査記録および関係者への聞き取りにより製造履歴を調査した。 (a)試験検査記録による調査・SG入口管台溶接部は,メーカで定められた手順どおりに製造されており,各SGとも作業手順および溶接作業期間に特異な状況はなかったことを確認した。 ・溶接士は十分な経験を有していることを確認した。 ・手直し溶接の記録は確認されなかった。 (b)関係者への聞き取りによる調査・作業者により使用するグラインダ工具の種類が異なる可能性はあるが,標準的な仕上げ方法は,グラインダ施工(研削)の後にバフ施工(3往復)であることを確認した。 ・バフ施工後,メーカ社内での浸透探傷試験*9(以下,「PT」という)で有意な指示が認められた場合等に,手直し溶接を実施する可能性があることを確認した。 ・手直し溶接を実施した場合に,グラインダ施工(研磨)にて仕上げている可能性があることを確認した。 *9:浸透探傷試験(PT)試験体表面に開口している傷を目で見やすくするため,可視染料の入った高浸透性の液を浸透させた後,余分な浸透液を除去し,現像剤により浸透指示模様として観察する方法。 b.運転履歴調査 泊発電所2号機の運転開始(平成3年4月12日)から第13回定期検査開始(平成20年3月13日解列)までの運転履歴を調査した。 (a)1次冷却材温度・圧力プラント運転中に発生した過渡変化を伴う事象として,原子炉手動停止事象が2件あった。また,これらの過渡変化において,過大な応力を発生させる異常な温度・圧力変化がないことを確認した。 (b)水質管理状況運転開始以降の水質は,保安規定で定める水質基準を満足しており,塩化物イオン等の有害な成分について管理されていることを確認した。 (4)溶接部の材料確認結果 溶接記録およびミルシートから,材料の成分はSG製造メーカ仕様どおりであり,600系ニッケル基合金であることを確認した。 (5)設計図書確認結果 工事計画認可申請書の強度計算書により,延性割れ,疲労割れに対する設計上の配慮がなされていることを確認した。 (6)文献調査結果 600系ニッケル基合金溶接部の割れに関する文献調査を行った結果,次のとおり類似部位での損傷事例等を確認した。 a.原子炉容器出口管台溶接部米国V.C.Summer発電所での漏えい(2000年10月発),スウェーデンRinghals 発電所3,4号機での欠陥指示(2000年8月,2000年9月発見)が報告されている。両発電所で見つかった割れは,いずれもデンドライト境界に沿った軸方向のひび割れであり,V.C.Summer 発電所の事例では,割れは溶接金属内を進展し,低合金鋼との境界,セーフエンドとの境界でほぼ停止していたと報告されている。原因は,補修溶接を行ったことによる高い引張残留応力により発生したPWSCCと推定されている。 b.加圧器管台溶接部日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機(以下,「敦賀発電所2号機」という)での漏えい(加圧器逃がし弁用管台漏えい,安全弁用管台欠陥指示,2003年9月発見)が報告されている。見つかった割れは,デンドライト境界に沿った軸方向のひび割れであり,溶接金属内を進展し,低合金鋼との境界,セーフエンドとの境界でほぼ停止していたと報告されている。原因は,手直し溶接を行ったことによる高い引張残留応力により発生したPWSCCと推定されている。 c.SG入口管台溶接部関西電力(株)美浜発電所2号機(以下,「美浜発電所2号機」という)での欠陥指示(2007年9月発見)および敦賀発電所2号機での欠陥指示(2007年10月発見)が報告されている。両発電所で見つかった割れは,いずれもデンドライト境界に沿った軸方向のひび割れであった。原因は,美浜発電所2号機の事例では,製造過程において機械加工を行ったことにより内表面のごく表層部に高い引張残留応力が発生し,PWSCCが発生したと推定されている。また,敦賀発電所2号機の事例では,製造過程において手直し溶接後のグラインダ施工(研磨)等により内表面の表層部に高い引張残留応力が発生し,PWSCCが発生したと推定されている。さらに,敦賀発電所2号機の調査では,表面加工状態確認試験(以下,「モックアップ試験」という)および実機サンプリング調査を実施しており,表面残留応力を推定している。 ・想定される表面仕上げの施工内容に応じ,10種類の供試体について表面観察とX線残留応力測定を行った結果が報告されている。 ・敦賀発電所2号機C−SG入口管台溶接部におけるグラインダ等の仕上げ施工による表層部の残留応力(周方向)については,ホットラボにて測定したボートサンプルの残留応力値(−591MPaから−263MPa)にモックアップ試験結果から求めた補正値(約680MPa)を加えると,グラインダ溝底部の表面残留応力は,約90MPaから約420MPaと推定されている。また,供試体No.6の表面残留応力は,平均で約470MPaと計測されている。d.PWSCC発生応力600系ニッケル基合金溶接部のPWSCC発生に関しては,定荷重応力腐食割れ(SCC)試験が実施されており,1次冷却材環境下において応力約300MPa以上でPWSCCが発生している。 (7)泊発電所2号機SG入口管台の表面残留応力の推定 泊発電所2号機の表面残留応力を推定する目的で,敦賀発電所2号機のモックアップ試験や実機サンプリング調査での応力測定結果と型取観察で確認した内表面の状態とを比較した。 ・A−SGNo.1指示部では,割れの部分を含めて,明瞭なグラインダ施工(研削)の跡が認められ,敦賀発電所2号機C−SGの実機ボートサンプルと同様の表面状態であった。また,B−SGNo.5指示部では,割れの部分においては,手直し溶接後のグラインダ施工(研磨)によるものと考えられる仕上げ跡が認められ,モックアップ試験供試体No.6と同様の表面状態であった。 ・このことから泊発電所2号機の当該溶接部の表面残留応力は,PWSCC発生応力である300MPaを超えていた可能性があると推定される。 (8)その他の損傷形態調査結果 延性割れ,疲労割れおよび腐食の可能性についても調査したが,使用環境条件,使用材料等に異常はなく,これらが原因とは考えられない。また,製作時の溶接不良や溶接欠陥についても,記録や実機調査結果から原因となるものは認められなかった。 (9)調査結果のまとめ a.スンプ観察結果から,割れはデンドライト境界に沿っており,これまでに国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されているPWSCCと同様の様相が認められた。 b.型取観察結果から,割れの認められた部位には,グラインダ施工(研削,研磨)の跡が認められた。 c.バフ施工後,手直し溶接を実施した場合に,グラインダ施工(研磨)にて仕上げている可能性があることを確認した。 d. 型取観察および文献調査の結果から,泊発電所2号機の当該溶接部においても,PWSCC発生の感受性があると考えられる約300MPa を超える引張残留応力が発生していたものと推定される。 e.以上の結果から,泊発電所2号機においても,敦賀発電所2号機で確認されたものと同様に,グラインダ施工(研削)およびバフ施工による仕上げでグラインダ施工(研削)の跡が残った部位または手直し溶接部のグラインダ施工(研磨)の部位の内表面に高い引張残留応力が発生したためPWSCCが発生し,その後進展した可能性がある。 |
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事象の原因 |
SGの製造時,入口管台とセーフエンドを600系ニッケル基合金で溶接し,グラインダ施工(研削)とバフ施工による仕上げを実施し,局所的にグラインダ施工(研削)の跡が残った部位や,内表面をグラインダ施工(研削)とバフ施工による仕上げを行った後に一部手直し溶接後にグラインダ施工(研磨)による仕上げを行った部位に高い引張残留応力が発生し,PWSCCが発生したものと推定される。また,当該溶接部の運転中の応力は周方向の方が軸方向より大きく,発生した割れは,軸方向に進展したものと推定される。 |
原因分類 | |
事象の種別 |
時間依存性のある劣化事象
火災に該当しない事象 |
再発防止対策 |
1.切削装置にてSG入口管台溶接部の内表面全周を切削し,浅い割れを除去した 後,必要によりグラインダ施工(研削)にて部分的に深い割れを除去する。な お,割れ等が除去されたことについてはPTにより確認する。 2.その後,深い割れを除去した部位について,600系ニッケル基合金で肉盛溶接を 行った上で,溶接部内表面全周をより耐食性に優れた690系ニッケル基合金によ り肉盛溶接を行い復旧する。なお,念のため,当該部の残留応力低減のためバフ 施工を実施する。 |
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水平展開の検討 | 不要 |
添付資料 |
概略系統図 9719_8_01(461KB)
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プレスリリース |
発生時運転モード | その他 | 発生前の電気出力 | 0[MW] |
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発見の方法 | 作業・点検 | ||
発電所への影響 | なし |
外部への放射能の影響 | なし | ||
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保安規定違反 | なし | ||
検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
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運転上の 制限外への移行 |
なし | ||
自動で作動した安全系 | なし | 手動で作動した安全系 | なし |
同発電所で発生した 同様事例 |
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その他 |