通番 | 9553 | 報告書番号 | 2007-九州-M008 |
---|---|---|---|
情報区分 |
保全品質情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
事象発生日時 | 2007年 12月 18日 12時 00分 | 事象発生日時(補足) | 渦流探傷試験における有意な信号指示を確認 |
会社名 | 九州電力株式会社 | 発電所 | 玄海発電所1号 |
件名 | 玄海原子力発電所1号機 蒸気発生器 1次冷却材出入口管台溶接部の内表面の点検について | ||
国への法令報告根拠 | なし | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
評価不要 |
事象発生時の状況 |
玄海原子力発電所1号機は、第25回定期検査において、経済産業省原子力安全・保安院からの指示「蒸気発生器出入口管台溶接部の内表面の点検実施について」(平成19・11・13・原院第7号)に基づき、全ての蒸気発生器(以下、「SG」という。)1次冷却材出入口管台溶接部内表面の渦流探傷試験(以下、「ECT」という。)を実施した。 ECTの結果、A−SG入口管台溶接部に3箇所の有意な信号指示が認めら れた。また、残りのA−SG出口管台及びB−SG出入口管台については、異常は認められなかった。
A−SG入口管台溶接部のECTにおける有意な信号指示部について、超音波探傷試験(以下、「UT」という。)により深さを確認したが、有意な信号指示は認められなかった。 さらに、当該部の詳細調査を実施し、表面のごく浅い割れであることを確認した。 また、この割れを考慮しても当該部は設計上の板厚を満足していることを確認した。 |
||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事象発生箇所 |
|
原因調査の概要 |
1.点検結果 (1)ECT結果 A−SG入口管台溶接部において、周方向 9度の位置(No.1)、130度の位置(No.2)、344度の位置(No.3)の3箇所に、軸方向の有意な信号指示が認められた。(周方向角度は、SG水室内から管台を見て上が0度(天)で時計廻りに計測した角度) (2)UT結果 ECTで有意な信号指示が認められたA−SG入口管台溶接部について、UTを実施した結果、有 意な信号指示は認められず、指示の深さは非常に浅いものと推定された。
(3)割れの深さ調査結果 ECTの結果から有意な信号指示が認められた3箇所について、No.1:0.6mm、No.2:0.5mm、No.3:0.8mmの研削を行ったところ、ECTで有意な信号指示は確認されなくなったことから、割れは深さ1mm程度のごく浅いものであった。念のため,ECT検出精度に余裕を見込んだ追加研削を実施した。 なお、追加研削実施後の板厚は、工事計画認可申請書の記載値である設計上の板厚75mmを満足していることを確認した。 2.原因調査 A−SG入口管台溶接部の割れに対して、ECTの結果から有意な信号指示が認められた箇所の原因調査を実施した。 管台溶接部の割れについては、スンプ観察結果より、デンドライト境界に沿った割れであり、1次冷却材環境下における応力腐食割れ(以下、「PWSCC」という。)の様相を呈していることが確認された。 600系ニッケル基合金溶接部内表面において、製造時の機械加工の跡が確認された。 機械加工条件の聞き取り調査結果と美浜2号機の原因究明において実施したモックアップ試験結果から、PWSCCの発生のしきい値である約300MPaを超える残留応力があったものと推定される。 製造時の補修溶接がないこと、特異な製造履歴、運転履歴がないことを確認した。 |
---|---|
事象の原因 |
取替用SG製作時、入口管台の600系ニッケル基合金溶接部において機械加工(切削)を行ったことにより、内表面において高い残留応力が発生し、その高い応力と、1次冷却材環境下によりPWSCCが発生したものと推定される。 |
原因分類 | 設備不備>製作不完全 |
事象の種別 |
時間依存性のある劣化事象
火災に該当しない事象 |
再発防止対策 |
(1)割れの除去 ECTで有意な信号指示が認められた部位については、深さ調査のためECTで有意な信号指示が確認されなくなるまで研削を行うとともに、ECTの検出精度を考慮した追加研削を実施した。 (2)超音波ショットピーニング(USP)の施工 予防保全対策として、今回の定期検査で実施予定であった残留応力緩和のためのUSPを施工した。 |
---|---|
水平展開の検討 | 要 |
添付資料 |
状況図 SG管台発生箇所図(330KB)
|
---|---|
プレスリリース |
発生時運転モード | その他 | 発生前の電気出力 | 0[MW] |
---|---|---|---|
発見の方法 | 作業・点検 | ||
発電所への影響 |
停止期間延長
24日間の停止期間延長 |
||
発電停止時間 |
外部への放射能の影響 | なし | ||
---|---|---|---|
保安規定違反 | なし | ||
検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
|||
運転上の 制限外への移行 |
なし | ||
自動で作動した安全系 | なし | 手動で作動した安全系 | なし |
同発電所で発生した 同様事例 |
|
---|---|
その他 | 用語集 ・渦流探傷試験(ECT) 材料表面に渦電流を流して、材料に発生する電磁誘導の変化から試験対象の傷を検出する方法。 ・超音波探傷試験(UT) 超音波が物体中を伝搬し、欠陥など不連続部で反射する性質を利用して、物体内部の欠陥を検出する方法。 ・超音波ショットピーニング(USP) 小さい金属の玉を溶接部表面に当てることにより、溶接部表面の残留応力を低減させる方法。 ・スンプ 金属表面を磨いた後、薬品を塗布し表面を腐食させ、フィルムに転写し、その転写された金属組織を観察すること。 ・1次冷却材環境下における応力腐食割れ(PWSCC) 1次冷却材中の環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ(材料、環境及び発生応力の3要素が重なって発生する割れ)。 ・デンドライト 金属融液が凝固した際に典型的に観察される組織で「樹枝状結晶」とも呼ばれる。 (デンドライト境界:金属が凝固する際に柱状に成長した結晶組織の境界) ・モックアップ試験 実物大の模型を用いた試験。 |