通番 | 9497 | 報告書番号 | 2007-関西-T014 |
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情報区分 |
トラブル情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
事象発生日時 | 2007年 12月 04日 | 事象発生日時(補足) | 工認板厚を満足しないと判断 |
会社名 | 関西電力株式会社 | 発電所 | 高浜発電所2号 |
件名 | 蒸気発生器1次冷却材入口管台溶接部での傷の確認について | ||
国への法令報告根拠 | 実用炉規則19条の17 | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
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事象発生時の状況 |
高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力82万6千キロワット、定格熱出力244万キロワット)は、美浜発電所2号機の蒸気発生器(以下、SGという)入口管台溶接部で傷が確認されたことを踏まえ、第24回定期検査中の平成19年11月25日から12月3日にかけて、3台あるSGの入口管台溶接部内面の渦流探傷試験*1(以下、ECTという)を行ったところ、A−SGで3箇所、B−SGで2箇所、C−SGで4箇 所に有意な信号指示が認められた。
なお、SG入口管台のECTについては、平成19年11月16日付NISA文書「蒸気発生器出入口管台溶接部の内表面の点検実施について」(NISA−163b−07−3)に基づく点検でもある。 ECTで有意な信号指示が認められた箇所について、超音波探傷試験*2(以下、UTという) を実施した結果、A−SGでは有意な信号指示は認められなかったが、B−SGでは1箇所において傷の深さが約6mm、C−SGでは2箇所において、それぞれ傷の深さが約6mm、約8mmと評価される信号指示が認められ、当該部位の板厚(B−SG約73mm、C−SG約73mm、約71mm)が、電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載の75mmを下回ると評価した。 *1:渦流探傷試験 高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接近することで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥に起こった渦電流を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。 *2:超音波探傷試験 超音波を使って金属等の内部にある有害な傷を検出する検査。 |
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事象発生箇所 |
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原因調査の概要 |
型取観察およびスンプ観察*3については、SG入口管台溶接部のUTで有意な信号指示が認められた3箇所のうち、指示部の長さ、深さ共に最大と評価したC−SG入口管台溶接部におけるNo.4指示部について実施した。 *3:スンプ 損傷部の表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察する。 (1)型取観察結果 指示部について型取観察を実施した結果は、以下のとおり。 ・傷周辺および 溶接金属全体に周方向のほぼ等間隔な機械加工跡が認められた。
・上記部位に製造時のバフ施工による明確な施工跡は認められなかった。 (2)スンプ観察結果 スンプによる金属組織観察を実施した結果は、以下のとおり。 ・周溶接部および肉盛溶接部に傷が認められ、セーフエンドやステンレス内張り部には達していなかった。また、傷は軸方向に約3〜5mmの長さを有する複数の割れが集まったもので、全体の長さは約11mmであった。 ・割れは、デンドライト(溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶)境界に沿った割れであった。 ・肉盛溶接部および周溶接部に明確な手直し溶接の痕跡は認められなかった。 ・延性割れ、疲労割れおよび腐食は確認されなかった。また、ブローホール等の溶接欠陥がないことを確認した。 ・割れの特徴は、これまで国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている1次冷却材環境下における応力腐食割れ(以下、PWSCCという)と同様の様相であった。 (3)製造・運転履歴調査結果 a.製造履歴調査 高浜発電所2号機の当該SGは、平成3年6月〜平成5年12月に製作され、平成6年3月〜平成6年4月に現地据付けされていたことから、当時の工事・検査記録および関係者への聞き取りにより製造履歴を調査した。 この結果、当該管台の製作手順に特異性は認められず、溶接士も十分な経験を有しており、記録および聞き取りから溶接の手直しはなかったと考えられる。なお、セーフエンドを周溶接した後、内面の機械加工を実施しており、作業員によって加工条件が若干異なると考えられることから当時の作業員に聞き取りした結果、特異な点はなく通常の加工を実施していたものと考えられる。表面機械加工後のバフ施工については実施したか否かは確認できなかった。 b.運転履歴調査 当該溶接部は、第14回定期検査(平成6年7月7日並列)時のSG取替工事の際に施工されており、第24回定期検査(平成19年8月17日解列)までの運転履歴を調査した結果は、以下のとおり。 ・1次冷却材温度・圧力 この期間中に発生した事象としては、原子炉手動停止事象4件、原子炉自動停止事象2件、出力抑制事象7件以外に過渡変化を伴う事象は認められなかった。また、これら過渡変化時とも、異常な温度・圧力変化を示していないことを確認した。 ・水質管理状況 この期間中の水質は、保安規定を満足しており、塩素等の有害な元素について管理されていることを確認した。 (4)材料確認結果 ミルシートの調査を実施し、材料は600系ニッケル基合金であること、およびその成分構成が設計仕様(規格値)どおりであることを確認した。 (5)設計・工事記録確認結果 工事計画認可申請書の強度計算書等により、延性割れ、疲労割れ等は発生しないことを確認した。 (6)SG管台機械加工モックアップ試験結果 C−SG入口管台の内面機械加工条件については、聞き取り調査結果から美浜発電所2号機と同等である。 従って、600系ニッケル基合金溶接部の表面の残留応力は、美浜発電所2号機の原因究明において実施した機械加工モックアップ試験結果から、PWSCCの発生応力のしきい値である約300MPaを超えていることを確認しており、高浜発電所2号機でも標準的な施工条件において残留応力(約564MPa(周方向引張応力)、約422MPa(軸方向引張応力))が発生すると推定される。また、一般的にSG入口管台のような形状においては、内圧により発生する応力は周方向の方が軸方向より大きいことが知られている。 なお、標準的なバフ施工により、圧縮応力(約−153MPa(周方向)、約−482MPa(軸方向))となった。 (7)文献調査結果 600系ニッケル基合金溶接部の割れに関する文献調査を行なった結果、類似部位での損傷事例としては、原子炉容器出口管台溶接部において米国V.C.Summer発電所での漏えい(2000年10月発見)、スウェーデンRinghals発電所3、4号機でのUT指示(2000年8月、2000年9月発見)が報告されている。また、加圧器管台において敦賀発電所2号機での漏えい(加圧器逃がし弁用管台漏えい、安全弁用管台UT指示;2003年9月発見)が報告されている。割れはいずれも軸方向のデンドライト境界に沿ったひび割れであり、V.C.Summer発電所と敦賀発電所2号機の調査では、割れは溶接金属内を進展し、低合金鋼との境界、セーフエンドとの境界でほぼ停止していた。これらの原因は、いずれも補修溶接を行なったことによる高残留応力により発生したPWSCCと推定されている。さらに、美浜発電所2号機のSG入口管台溶接部において機械加工の影響による高残留応力によりPWSCCの発生(2007年9月発見)が報告されており、敦賀発電所2号機においても溶接部のグラインダ施工の影響による高残留応力によりPWSCCの発生(2007年10月発見)が報告されている。 また、600系ニッケル基合金溶接部のPWSCCの発生に関しては、360℃温度加速SCC定荷重試験が実施されており、1次冷却材環境下において応力約300MPa以上でPWSCCが発生するとされている。 (8)その他の損傷形態 延性割れ、疲労割れ、腐食の可能性についても調査したが、使用環境条件、使用材料等に異常はなく、これらが割れの原因とは考えられない。 製作時や定期検査中のスクラッチについても記録や実機調査結果から原因とは考えられない。また、製作時の溶接不良や溶接欠陥についても記録や実機調査結果から原因となるものは認められなかった。 (9)調査結果まとめ ・割れについては、デンドライト境界に沿った粒界割れであり、PWSCCの様相を呈していることが確認された。 ・600系ニッケル基合金溶接部内表面に製造時の機械加工跡が確認されたことと、美浜発電所2号機の原因究明において実施したSG管台機械加工モックアップ試験結果から、当該溶接部内表面にPWSCCの発生応力のしきい値である約300MPaを超える残留応力があったものと推定される。 ・製造時の補修溶接がないこと、特異な製造履歴・運転履歴がないこと、有害な元素がないことを確認した。 |
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事象の原因 |
取替用SGの製作時、600系ニッケル基合金溶接部に機械加工を行なったことにより、内表面において高い残留応力が発生し、その高い応力によるPWSCCが発生したものと推定される。また、発生した割れは、運転時の応力等により軸方向に進展したものと推定される。 |
原因分類 | 設備不備>製作不完全 |
事象の種別 |
時間依存性のある劣化事象
火災に該当しない事象 |
添付資料 |
状況図 T2SG図面(図1)(49KB) 状況図 T2SG図面(図2)(525KB)
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プレスリリース |
発生時運転モード | モード6 | 発生前の電気出力 | 0[MW] |
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発見の方法 | 作業・点検 | ||
発電所への影響 | 停止期間延長 | ||
発電停止時間 |
外部への放射能の影響 | なし | ||
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保安規定違反 | なし | ||
検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
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運転上の 制限外への移行 |
なし | ||
自動で作動した安全系 | なし | 手動で作動した安全系 | なし |
同発電所で発生した 同様事例 |
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その他 |