通番 | 3143 | 報告書番号 | 2005-関西-M011 |
---|---|---|---|
情報区分 |
保全品質情報 |
報告書状態 | 最終報告 |
事象発生日時 | 2005年 07月 20日 10時 35分 | 事象発生日時(補足) | (運転上の制限を満足しないと判断) |
会社名 | 関西電力株式会社 | 発電所 | 高浜発電所4号 |
件名 | B−非常用ディーゼル発電機の過速度トリップについて | ||
国への法令報告根拠 | なし | 国際原子力 事象評価尺度(INES) |
評価不要 |
事象発生時の状況 |
高浜発電所4号機は、定格熱出力一定運転中のところ、平成17年7月20日、B−非常用ディーゼル発電機(以下「B−D/G」)の、定例の起動試験のため、D/Gを起動したところ、10時22分に中央制御室で「B−D/Gトリップ」警報が発信、現地で「過速度トリップ」警報が発信し、B−D/Gが自動停止した。これにより、保安規定の運転上の制限を満足しない状態となった。 その後、11時25分から11時35分にかけてA−D/Gの起動試験を実施し、動作可能であることを確認した。 本事象による環境への影響はなく、プラントの運転状況にも異常はない。 このため、工場にて健全性を確認した予備の調速装置に取り替え、当該D/Gの起動試験、負荷試験等を実施し、全て正常に作動することを確認のうえ、7月25日3時35分に運転上の制限を満足した状態に復帰した。 |
||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事象発生箇所 |
|
原因調査の概要 |
1.現地での点検、調査結果 今回の事象では、電磁式回転計による過速度信号の2/3以上の一致により過速度トリップしていることから、検出器及び検出回路の異常ではなく、実際に456rpmに到達し、過速度トリップに至ったと考えられる。このことから、機関の回転数を調整している調速装置、操縦リンク機構、及び燃料制御装置と、起動時に機関を回転させる始動空気系統に要因があると考えられるため、これらの機器につい て調査を実施した。
(1) 燃料制御装置 起動初期において機関に設定以上の燃料が供給された場合、過速度に至る可能性があることから、制限シリンダや同シリンダへの制御用空気供給ラインについて点検した結果、制限シリンダについては各部に緩みがないこと及び固着がないことを確認した。また、制限シリンダ制御用空気ラインに詰まり等の異常がないことを確認した。 (2) 操縦リンク機構 a. バネ固着確認結果 操縦リンク機構バネが固着し動作しないと、回転数応答性が悪くなり、過負荷に至る可能性があることから、手動で操縦リンク機構バネを作動させた結果、固着がないことを確認した。 b. 摺動抵抗測定結果 機関への燃料供給を制御している操縦リンク機構の摺動抵抗増加により、起動初期の回転数応答性が悪くなり、過負荷に至る可能性があることから、リンク機構の摺動抵抗を測定した結果、前回定検の整備後の値に比べ若干増加していたが、判定基準値内であった。また、リンク機構の洗浄を行い、再度摺動抵抗を測定した結果、ほぼ前回定検の整備後の値であり、リンク機構として健全であることを確認した。 摺動抵抗の増加については、前回定検の整備前の値と同等であると共に、調速装置の駆動力に比べ摺動抵抗の値が十分小さいことから、回転数への影響はないものと考えられる。 (3) 始動電磁弁(始動用空気系統) 始動電磁弁が始動後も開状態が継続すれば、回転数が増加する方向に作用することから、始動電磁弁の開閉動作及び分解点検を実施した結果、異常がないことを確認した。 (4) 調速装置(設定値確認) 速度設定値、負荷制限設定値、補償調整指針設定値、補償針弁開度のそれぞれの設定値(開度)を確認した結果、前回定検時に設定したものと同じであることを確認した。 (5) 過去の記録調査(最大到達回転数) 13,14回定検時の最大到達回転数を調査した結果、425rpm一定でバラツキはなかった。また、前回定検時の同データを調査した結果、規定値の443rpm以下であったが、434〜442rpmと高めであった。さらに、起動時の発電機電圧確立から最大到達回転数までの時間を調査した結果、13、14回定検時は1.5〜1.7秒であったが、前回定検では2.7〜3.5秒と増加していた。 2.調速装置の工場点検、調査結果 現地において確認できる機器については現地で調査を行ったが、調速装置については、内部点検、応答性確認を行うため、工場へ送り以下の調査を実施した。 (1)調速装置内部 調速装置内部の分解点検を実施した結果、有害な傷、発錆、異物等は認められず、各ピストンがスムーズに動くこと、摺動部品等の寸法にも問題がないことを確認した。 (2)作動油 作動油を分析した結果、指定された作動油と同等品を使用していることを確認した。また、汚濁等の異常は認められなかった。 (3)応答性確認 a. 調速装置単体での速度変化時の応答性を確認するため、応答特性試験を実施し、定格回転数(定負荷相当)の状態から、無負荷への瞬時負荷変動に相当する信号を与えた時の最大到達回転数及びバラツキの程度を調査した。 試験の結果、最大到達回転数の最大値と最小値の差であるバラツキは、予備品が0.2%であるのに対し、当該品は分解点検前が0.7%で、分解点検後は0.5%と若干変化が認められたものの、大きい値を示した。また、回転数の整定時間は、予備品と比較して、当該品は分解点検前及び点検後も長時間を要した。 *:応答性の調整は、補償針弁および補償調整指針で行う b.応答性の調整が最大到達回転数に与える影響を確認するため、当該品を現地機関に取り付けられた同一状態の設定から応答性の調整(補償針弁開度12/8、補償調整指針の目盛りを2)を行い、試験を実施した結果、最大到達回転数の最大値と最小値の差であるバラツキは0.1%となり、回転数の整定時間についても2.3秒となり、応答性の改善が認められた。 以上の調査結果から、当該品が現地機関に取り付けられた同一状態の設定(補償針弁開度3/8、補償調整指針の目盛り3)では応答性が悪いことがわかった。また、調整を行うことで応答性が改善することがわかった。 |
---|---|
事象の原因 |
調速装置について工場にて調査を実施した結果、装置内部の部品や組立状況等には異常は認められなかったが、応答性の低下が確認された。 また、前回(第15回)定期検査における起動試験時の最大到達回転数が、それ以前の定期検査での回転数に比べてトリップ設定値に近く、バラツキが生じていた。 これらのことから前回定検より、何らかの原因により、調速装置の応答性が低下していたと考えられる。 前回定期検査後プラント運転に伴い、調速装置に経時的な若干の応答性低下が生じたことにより、過速度トリップに至ったものと推定される。 |
原因分類 | 保守不備>保守不完全 |
事象の種別 |
時間依存性のない事象(偶発事象を含む)
火災に該当しない事象 |
添付資料 |
その他添付ファイル DG(76KB)
|
---|---|
プレスリリース |
発生時運転モード | モード1 | 発生前の電気出力 | 892[MW] |
---|---|---|---|
発見の方法 | 試験・検査 | ||
発電所への影響 | なし |
外部への放射能の影響 | なし | ||
---|---|---|---|
保安規定違反 | なし | ||
検査指摘事項の 深刻度(SL)判定結果 |
|||
運転上の 制限外への移行 |
7月20日10時35分 運転上の制限を満足していないと判断 7月25日 3時35分 運転上の制限を満足した状態に復帰 |
||
自動で作動した安全系 | なし | 手動で作動した安全系 | なし |
同発電所で発生した 同様事例 |
|
---|---|
その他 |