【登録日】
2005/05/02
【更新日】
2005/08/23

基本情報

通番 2942 報告書番号 2005-東京-M001
情報区分

保全品質情報

報告書状態 最終報告
事象発生日時 2005年 04月 13日 事象発生日時(補足)
会社名 東京電力株式会社 発電所 福島第二発電所4号
件名 サンプリングノズル折損の確認について
国への法令報告根拠 なし 国際原子力
事象評価尺度(INES)
評価不要

発生箇所および発生時の状況

事象発生時の状況  平成17年3月20日から第13回定期検査期間中の当所4号機において,復水浄化系止め弁(F008)を閉操作したところ全閉しなかったことから,平成17年4月13日に当該弁を分解点検した結果,弁座付近で筒状の金属物(長さ約38cm×直径約3cm)を発見し回収した。
 その後,当該金属物について調査した結果,復水脱塩装置出口水質測定用サンプリングノズル(SP013)であることが確認された。
 又,外
観目視点検した結果,当該破断部に欠損部がないことも確認された。

 このため,当該ノズルと同様な長さの類似ノズルについて超音波探傷検査を実施した結果,原子炉給復水系の低圧(第三)給水加熱器出口の水質測定用サンプリングノズル(SP017)及び高圧(第一)給水加熱器出口の水質測定用サンプリングノズル(SP019)に有意なエコーが確認されたことから,各々のノズル取付け用管台を切断しノズルの状況を確認した。
 その結果,高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)がノズル付根部から破断(長さ約37cm×直径約3cm)し流出していること,又,低圧給水加熱器出口ノズル(SP017)については破断していなかったが浸透探傷検査を実施した結果,き裂が発生していることが確認された。

 その後,流出した高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)を回収するため,平成17年4月23日から給水スパージャまでの給水ライン,及び給水ラインから分岐している給復水再循環ラインについて,弁の分解や現場の状況に合わせファイバースコープによる目視点検,超音波探傷検査及び放射線透過検査による探索を実施した。
 その結果,原子炉給水系(B)の給水リングヘッダーティ部付近にノズルと思われるものを放射線透過検査により発見し回収し,破断したノズル付根部の破断部位と突き合わせたところ破断形状が一致したこと,寸法が製作図面とほぼ一致したことから回収されたノズルは,高圧給水加熱器出口水質測定用サンプリングノズル(SP019)であることが確認された。
 尚,外観目視点検した結果,当該破断部に欠損部がないことも確認された。

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事象発生箇所
【設備】  その他  【系統】  その他
【機器1】 その他>その他  【部品1】 その他(その他*) , その他(サンプリングノズル)

原因

原因調査の概要  復水脱塩装置出口ノズル(SP013)及び高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)が,ノズル付根部より破断した原因,及び低圧給水加熱器出口ノズル(SP017) 付根部にき裂が発生した原因を調査するため要因分析に基づき調査した結果,以下のことが確認された。
(1)材料不良
a.ノズルの材質(SP013:SUS304,SP017:SUS316L,SP019:SUS316L)をミルシートにて確認した結
果,JIS規格値を満足していることが確認された。
b.ノズル(SP013,SP017,SP019)について成分分析を実施した結果,JIS規格値を満足していることが確認された。
c.ノズルの健全部について硬さ測定を実施した結果,JIS規格値を満足していることが確認された。

(2)施工不良
 ノズル(SP013,SP017,SP019)と管台との溶接施工記録を確認した結果,溶接施工に異常のないことが確認された。

(3)寸法不良
a.ノズル(SP013,SP017,SP019)の製作時の記録を確認した結果,許容公差内であることが確認された。
b.ノズル(SP013,SP017, SP019)ついて寸法を測定した結果,ほぼ製作図面通りの寸法であることが確認された。

(4)応力腐食割れ
 ノズル(SP013, SP017, SP019)の破面について外観観察及び表面ミクロ観察(SEM)を実施した結果,破面は疲労破面と延性破面であり応力腐食割れ特有の様相である粒界割れでないことが確認された。

(5)疲労
a.破断したノズルの破面観察
(a)復水脱塩装置出口ノズル(SP013)及び高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)
・破面の外観観察,表面ミクロ観察(SEM)を実施した結果,ノズル外表面から中央部に向ってき裂の進展を示す「すじ」や疲労破面の特徴である「ビーチマーク」や「ストライエーション状の模様」が確認された。
 又,延性破断の特徴である「ディンプル状の模様」が確認された。
・復水脱塩装置出口ノズル(SP013)の最終破断部の酸化皮膜色は,当該部周辺とほぼ同じであった。
 又,高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)は,表面全体が酸化物付着によるものと思われる赤色の酸化物で覆われていた。更に,当該酸化物を除去したところ,長期間酸化されたことによるものと思われる黒色の酸化物で覆われていた。
 
 このことから,ノズル(SP013,SP019)の破断は至近に発生したものでないと推定された。
 尚,破断したノズル(SP013)は管台との取付け付近が潰れていたが,これは流出後に復水浄化系止め弁(F008)の閉操作によって潰れたものと推定された。

b.き裂が発生したノズルの破面観察
(a)低圧給水加熱器出口ノズル(SP017)
・ノズル強制破断前の外観点検
  ノズル付根部と管台の溶接部及び管台の一部を除去し浸透探傷検査を実施した結果,0°側(上流側)の周方向に約33mm及び180°側(下流側)に約35mmの線状指示が確認され,類似ノズル調査時の超音波探傷検査において検出されたエコー(0°側及び180°側の外面側から有意なエコーを検出)とほぼ一致していることが確認された。
・ノズル強制破断後の破面観察
  外観観察及び表面ミクロ観察(SEM)を実施した結果,ノズル外表面から中央部に向ってき裂の進展を示す「すじ」や疲労破面の特徴である「ビーチマーク」や「ストライエーション状の模様」が確認され,き裂の最大深さは,0°側で約5mm,180°側で約7mmであることが確認された。
  0°側及び180°側の酸化皮膜が除去しきれなかったことから,き裂は至近に発生したものではなく,又,発生後のき裂進展速度も遅かったものと推定された。

以上の破面観察の結果から,以下のことが確認された。
・き裂は,ノズル外表面で発生し内部に向かって進展しており,破面にはき裂の進展を示す「すじ」や疲労破面の特徴である「ビーチマーク」や「ストライエーション状の模様」が確認された。
・破断の時期については明確に特定することは出来なかったが,破面の酸化状態から相当以前に発生したものと推定された。


c.振動評価
破面観察の結果から,各ノズル(SP013, SP017, SP019)とも疲労によりノズル外表面でき裂が発生したことにより損傷したものと推定されたため,各ノズル部の振動評価を実施した結果,以下のことが確認された。
尚,振動評価は,配管内に設置される構造物に対する流力振動評価方法として既存の(社)日本機械学会の「配管内円柱状構造物の流力振動評価指針(JSME S012-1998)」(以下,「JSME」という。)に基づき実施した。
評価は,流速による共振発生の有無と発生応力について実施し,基準値として共振発生の有無は換算流速が1.25(実験の結果から共振が発生する値)を超過していること,又,疲労評価についてはアメリカ機械学会(ASME)の実験データから疲労限を求め,発生応力との比較を実施した。

(a)破断したノズル
・復水脱塩装置出口ノズル(SP013)
通常運転時の流速約4.4m/sを基に評価すると,換算流速は約0.96で応力は約115MPa(疲労限:約219MPa)となるため,共振が発生する可能性は低く,又,発生応力も低いことから破断する可能性はない。
しかし,原子炉起動時・停止時には復水脱塩装置をバイパスして運転していることから,運転モード変更時の流速約7.2m/sを基に再評価した結果,換算流速は約1.55で発生応力は約381MPa(疲労限:約219MPa)となる。
このことから,復水脱塩装置バイパス運転時には,共振が発生する可能性が高く,発生応力も高いことが確認された。

・高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)
通常運転時の流速約6.9m/sを基に評価した結果,換算流速は約1.42で発生応力は約255MPa(疲労限:約210MPa)となるため,通常運転中において共振が発生する可能性が高く,発生応力も高いことが確認された。

(b)き裂が発生したノズル
・低圧給水加熱器出口ノズル(SP017)
通常運転時の流速約5.0m/sを基に評価した結果,換算流速は約1.00で応力は約127 MPa(疲労限:約204MPa)となるため,共振する可能性は低く,又,発生応力も低いことから破断する可能性はない。
しかし,プラント建設の試運転時に実施した原子炉水位設定点変更試験において,一時的に給水流量が増加し流速が大きくなっており,この時の流速約5.5m/sを基に再評価した。
その結果,換算流速は約1.10で発生応力は約161MPa(疲労限:約204MPa)となり,通常運転時よりも共振が発生する可能性が高く,又,発生応力についても高いことが確認された。
このことから,当該試験でき裂が発生・進展したが,試験終了後の通常運転時には共振が発生せず,発生応力も低かったことからき裂の進展が停止したものと推定された。

なお,今回の高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)の探索及び回収作業において,弁及び配管内部を点検した結果,異常がないことを確認した。


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事象の原因  原因調査の結果から各ノズルが損傷した原因は,以下の通りと推定された。
(1)復水脱塩装置出口ノズル(SP013)
 原子炉起動時・停止時の復水脱塩装置バイパス運転時には,共振域になる流速であったこと及び発生応力が疲労限を超えたことによって,破断したものと推定された。
(2)高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)
 通常運転中において,共振域になる流速であったこと及び発生応力が疲労限を超えたことによって,破断したものと推定された。
(3)低圧給水加熱器出口ノズル(SP017)
 試運転時の原子炉水位設定点変更試験において,流速が通常運転時と比べ一時的に増大し共振域になる流速に近づいたことによって,き裂が発生したものと推定された。

原因分類 その他>その他
事象の種別 時間依存性のない事象(偶発事象を含む)
火災に該当しない事象

再発防止対策

再発防止対策 (1)破断した復水脱塩装置出口ノズル(SP013) 及び高圧給水加熱器出口ノズル(SP019)について,短尺タイプのノズルに交換する。
 尚,短尺タイプのノズルについてJSMEに基づく評価を行い,換算流速が基準値1.00以下(SP013:約0.13,SP019:約0.24)であること,発生応力(SP013:約1.81MPa,SP019:約3.84MPa)が疲労限以下(SP013:約111MPa,
SP019:約104MPa)であることを確認した。

(2)き裂が発生した低圧給水加熱器出口ノズル(SP017)については,現在も未使用であること,更に今後,使用する予定もないことから撤去する。

(3)他のサンプリングノズルについてJSMEに基づく評価を実施し損傷の可能性がある※と確認されたノズルについて点検した結果,異常は認められなかったが,念のため,第13回定期検査中に短尺化したノズルに取替え等を実施する。
※:換算流速が1.00を超過,又,換算流速が1.00未満であっても発生応力が疲労限以上(通商産業省告示第501号)を対象。

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水平展開の検討 水平展開状況

参考資料

添付資料
プレスリリース

プラント状況

発生時運転モード 燃料交換 発生前の電気出力 0[MW]
発見の方法 作業・点検
発電所への影響 なし

分析用情報

外部への放射能の影響 なし
保安規定違反 なし
検査指摘事項の
深刻度(SL)判定結果
運転上の
制限外への移行
なし
自動で作動した安全系 なし 手動で作動した安全系 なし

関連情報

同発電所で発生した
同様事例
その他