【登録日】
2009/08/12
【更新日】
2014/07/10
更新履歴

基本情報

通番 10503 報告書番号 2009-中部-M019 Rev.3
情報区分

保全品質情報

報告書状態 最終報告
事象発生日時 2009年 08月 07日 事象発生日時(補足)
会社名 中部電力株式会社 発電所 浜岡発電所5号
件名 タービンバイパス弁の監視強化について
国への法令報告根拠 なし 国際原子力
事象評価尺度(INES)
評価不要

発生箇所および発生時の状況

事象発生時の状況  平成21年8月4日、定格熱出力一定運転中の5号機において、タービンバイパス弁(※1)(以下、「TBV」という。)の開度指示(TBVトータル開度)にわずかな上昇が確認された。そのため、TBV第1弁から第3弁すべての開度指示を調査した結果、同年7月22日に実施したタービン弁作動試験(※2)から変動が見られ、周期的にすべてのTBVの開度指示が同時に変動していることが確認された(変動量は第3弁が最も大き
く約1%程度)。
 なお、主蒸気圧力、発電機出力の変動など、TBVの開弁を示すデータが確認されていないことから、TBVは実際には開弁していない。

※1 タービンバイパス弁
 プラントの起動、停止、負荷しゃ断などにおいて、原子炉で発生した蒸気の一部をタービンを通さず、直接復水器に送気させる弁で、第1弁から第3弁の3台がある。
※2 タービン弁作動試験
 TBV寸動試験等、タービン主要弁の動作確認のため定期的に実施している試験

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事象発生箇所
【設備】  タービン設備  【系統】  タービン制御系
【機器1】 弁装置>油圧作動弁  【部品1】 その他(タービンバイパス系)

原因

原因調査の概要  状況を調査した結果、主蒸気圧力、発電機出力等、プラントの運転パラメータに異常は認められなかった。また、弁を駆動する電気式油圧制御装置(以下、「EHC」という。)油圧、弁の開閉を制御するサーボ弁、弁の開度を検出する差動トランス等、TBVの動作を制御するEHC制御装置にも異常は認められなかった。
 詳細調査のため、TBVにダイヤルゲージを取り付け、開度指示変動発生時のダイヤルゲージの値の変化を確認
した結果、TBV1弁から3弁すべてにおいて、ダイヤルゲージの値が変化することが確認された。変化量は第3弁が最も大きく0.57mmで、これは開度指示にして約1%に相当し、確認された開度指示の変動量と一致した。また、TBV廻りの各部に仮設温度計を取り付け、開度指示変動発生時の温度変化を確認した結果、TBV弁箱温度、出口配管温度、第1段リークオフ配管温度が低下することが確認された。
 開度指示変動発生時の各部の温度変化から、第1段リークオフ系統(※1)にドレンが滞留し、このドレンがTBVのグランド部から弁箱内(※2)へ逆流し、TBV出口側へ流れている可能性があると考えられたため、第1段リークオフ系統の手動弁を閉弁したところ、3弁すべての開度指示の変動量が約0.1%程度となった。
 なお、平成21年8月11日に発生した地震によるプラント停止後、第1段リークオフ系統の逆流防止弁(以下、「第1段リークオフ逆止弁(※3)」という。)の分解点検を実施した結果、弁体シート面に浸食が認められた。

※1 第1段リークオフ系統
 TBV急開時やプラント運転中のTBV作動試験時など、TBV開弁時にグランド部からの蒸気の外部漏えいを防止するため、グランド部の蒸気の一部を、高圧タービンから低圧タービンへ蒸気を導く配管(以下、「クロスアラウンド管」という。)へ導く系統であり、通常運転中のTBV閉弁状態では流れがない。
※2 TBVの弁箱内は、真空状態の復水器と繋がっており圧力が低い。
※3 第1段リークオフ逆止弁
 通常運転中はTBVは閉弁しており、TBVのグランド部の圧力よりもクロスアラウンド管内の圧力の方が高くなるため、クロスアラウンド管からグランド部へ蒸気が流れることを防止するための弁。
 また、クロスアラウンド管内の蒸気には水素が含まれているため、第1段リークオフ系統内に水素が滞留することを防止するため、逆止弁はクロスアラウンド管の近傍に設置されている。

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事象の原因 【本事象の推定原因】
 第1段リークオフ逆止弁がシートリークしてクロスアラウンド管から第1段リークオフ系統へ蒸気が流入し、流入した蒸気が凝縮してドレンとなり、滞留したドレンが減圧沸騰してTBVのグランド部へ流入することにより、弁棒が冷却されて、TBVが閉弁状態のまま弁棒が縮み、開度指示が変動したものと推定した。また、このドレンの滞留と減圧沸騰が周期的に発生していたものと推定した。

【第1リークオフ逆止弁のシートリークの原因】
第1リークオフ逆止弁はクロスアラウンド管の近傍(クロスアラウンド管から約135mmの位置)に設置されているため、クロスアラウンド管内の蒸気(乱流)の影響を受けて弁体が動き、クロスアラウンド管からの蒸気の流入により弁体・弁座が浸食を受けてシートリークが発生したと推定した。
原因分類 その他>その他(逆止弁シートリーク)
事象の種別 火災に該当しない事象

再発防止対策

再発防止対策 第1リークオフ逆止弁については、シート部の点検修理を行った。

その後、当該リークオフ配管の接続先がクロスアラウンド管に近いことが原因と考えられることを踏まえ、浜岡3〜5号機についての恒久対策を検討した結果、当該配管の接続先を見直し、現状のクロスアラウンド管から復水器に直接接続するルートに変更することとした。
このルート変更により、復水器側からタービンバイパス弁グランド部へ蒸気が逆流すること
はなく、リークオフ逆止弁は不要となるため、当該逆止弁は撤去することとした。

 なお、恒久対策を実施するまでの間、TBVの弁箱はドレンによる冷却を繰り返し受けることにより、通常以上の熱疲労の発生が考えられるが、TBVの弁箱の熱疲労に対する余裕は十分にあり(許容繰返し回数は約4万回)、約5時間に1回(現在確認されている開度指示変動の発生周期)の周期で開度指示変動が発生した場合、約20年間耐えうる。現状のままでもTBVの機能およびプラントの運転に影響はないため、現状のままで運転することとし、次回以降の定検にて恒久的な対策を実施する。
 また、TBVのリフト量の調整を実施し、開度指令信号に対するリフト量を管理値内で現状から0.4mm程度(開度指示にして約0.7%)少なくすることにより、TBVの開度指示をマイナス側にシフトさせ開度指示変動の発生を抑制した。 なお、このリフト量の調整は管理値内で実施するため、EHC系統(制御信号、油圧シリンダー等)の機能に影響は与えない。

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水平展開の検討 不要

参考資料

添付資料
プレスリリース なし

プラント状況

発生時運転モード 運転 発生前の電気出力 1267[MW]
発見の方法 運転監視
発電所への影響 なし

分析用情報

外部への放射能の影響 なし
保安規定違反 なし
検査指摘事項の
深刻度(SL)判定結果
運転上の
制限外への移行
なし
自動で作動した安全系 なし 手動で作動した安全系 なし

関連情報

同発電所で発生した
同様事例
2010-中部-M026 タービンバイパス(B)軸封部の配管に設置した逆止弁の浸食について
その他