【登録日】
2016/10/17
【更新日】
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基本情報

通番 268
文書発行日 2015年01月09日
対象プラント

アメリカ  : セントルーシー 1他

件名 洪水事象に対する緩和能力の低下
出典(資料番号) NRC Information Notice 2015-1 
原文URL http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1427/ML14279A268.pdf
内容 目的:
米国原子力規制委員会(NRC)は、認可施設における外部洪水の影響を防止または緩和するために用いる機器、手順書、及び解析の不備により洪水事象に対する緩和能力の低下に至る外部洪水防護に関する最近の運転経験を通知するために、本Information Notice(IN)を発行する。後述の事象から得られる情報は、洪水バリア等の物理的防護機能の設計及び保守、外部洪水の影響を緩和するための異常時運転手順書を効果的に実行する能力、並びに設計基準洪水位や浸水時間の特定のために用いられる解析の正確性に適用することが可能である。

状況説明:
St. Lucie-1(CE-PWR)
2014年1月9日、100%出力で運転していたところ、一時的に異常な豪雨を経験した。本事象は設計基準未満であったものの、発電所 は雨水ドレン の能力低下により異常事象を宣言した。サイトの雨水ドレン 系統が閉塞したことにより、1号機の原子炉補助建屋(RAB)外側の非常用炉心冷却系(ECCS)配管トンネル内で水が逆流した。内部洪水バリアの欠如により要求性能を満たさない2つのコンジットを経由してRABに浸水した。運転員は影響を受けた位置と安全関連系統の位置の間にある床ドレン 弁の操作によりRABへの浸水に対応した。状況の範囲をレビューしたところ、必要な内部洪水バリアが欠如していた電線管を1号機で4つ発見した。コンジットを取り付けた改修工事において、設計基準洪水位以下の位置に取り付けるコンジットに対して内部洪水バリアを取り付ける必要性を失念していた。原子力エネルギー協会(NEI)12-07「プラント洪水防護機能の確認現場調査 」(2012年5月付)に示されているガイダンスを用いて2012年に発電所 で実施された現場調査 では、要求性能を満たさないコンジットやコンジットの内部洪水バリアの欠如を見落としていた。また、発電所 はNEI 12-07に従い2012年に実施された現場調査 の結果を評価するために用いた工学評価において、サイトの浸水時間を考慮しておらず、このため、要求性能を満たさない洪水バリアを通じた外部洪水の浸水量を過小評価していた。事業者は、影響を受ける全てのコンジットへの性能要求を満たした内部防水シールの施工を含む是正措置を実施した。

Brunswick-1/2(BWR/4)
2011年4月20日、NRCは推定最大ハリケーン(PMH)の発生時に非常用ディーゼル発電機(EDG)の燃料油タンク・チャンバー(FOTC)への外部洪水を緩和する能力に影響を与えるような開口部を当該チャンバーにおいて発見した。その後、事業者が状況の範囲を特定するための現場調査 を実施し、要求性能を満たさない、または不適合な洪水防護機能(大部分は貫通部シール)を多数発見した。2012年8月から9月にかけて実施されたNEI 12-07に従う洪水防護機能に対する現場調査 では、事業者が原子炉建屋やEDG建屋において要求性能を満たさない貫通部シール、コンジットシール、及び2号機原子炉建屋の鉄道用扉の下部の隙間充填材における7.6cm(3in)の隙間等を新たに発見した。この隙間によりPMH発生時に原子炉建屋に浸水する可能性があった。NRCはPMH発生時にシャッタードアからEDG建屋に浸水する可能性についても指摘した。さらに事業者は、PMH発生時にサービス水建屋(SWB)へ浸水の原因となるような、シールされていないサービス水ポンプ(SWP)の基礎台下部のくさび、貫通部シールの隙間、シールされていないSWBの電線管を発見した。また事業者は、プラントの建設時から存在していたシールされていないSWPのリークオフドレン を通じた取水カナルからSWBへの潜在的な浸水経路も特定した。このような状況は、発電所の洪水防護プログラムが欠如していたことに起因する。クレジットがとられた洪水防護機器に対する予防保全プログラムが確立されていない事例が多く確認された。是正措置には、要求性能を満たさないシールの保修、外部洪水の影響を緩和する工学プログラムの作成及び実施、並びに、内部及び外部洪水に対する局所的な設計基準の策定が含まれる。

Sequoyah-1/2(WH-PWR)
2012年12月12日、発電所の事業者であるテネシー・バレー開発公社(TVA)は電気抗の検査を行い、不適切な電線貫通部シールにより必須原水冷却水(ERCW)ポンプステーションへの浸水経路が形成されていることを確認した。その状況は以前から認識されており、当該電線貫通部をシールするために設計図面で要求されている洪水バリアが取り付けられていなかったいという事実に基づき、要求性能を満たさない状態であると評価されていた。その後に行われた当該コンジットに対する物理的検査により、適切でない洪水バリアが取り付けられていたことが明らかとなった。事業者は、コンジットに影響を与えるような水位を超過する外部洪水事象によりERCWポンプステーションが浸水し、1号機及び2号機に影響する可能性があるとの結論を下した。不適合であるシールによりサンプポンプの容量以上の速度でポンプステーションが浸水し、サイトの立地高さ以下の洪水事象においてもERCW系が設計機能を遂行することができなくなる可能性があった。事業者は関連文書のレビューから、電線貫通部シールは防護バリアの機能を果たさないとの結論を下した。しかしながら、洪水バリアとその要件に関する明確な関係性は無かった。事業者は、性能要件を満たしたコンジットシールの取り付け、並びに、洪水バウンダリを特定し、シールの詳細情報を追加するための設計基準文書及び洪水バリアの図面の見直しを含む是正措置を実施した。

Watts Bar-1(WH-PWR)
2013年、発電所の事業者であるTVAは、設計基準洪水事象の発生予報通知からサイトに洪水が到達するまでの想定時間内で外部洪水緩和手順を実施する能力が証明できないことを確認した。発電所の設計基準洪水事象により、サイトの立地高さ以上に浸水する可能性があった。結果として、事業者はサイトの浸水に備えた準備として原子炉を安全に停止し、崩壊熱を除去する能力を保証するために、プラント系統を再構成するために用いる手順に依存することになった。有効時間内における確実な洪水緩和手順の実施を阻害する問題の例としては以下が挙げられる:
・手順を実施するための作業活動が連続的であったために、必要な時間が長くなる。
・配管の干渉及び系統間スプールピースの適切な支持位置。
・実施手順で使用される機器に間違ったラベルが貼られていた、または機器が紛失していた。
・より複雑な作業や作業間で調整を必要とする作業の所用時間を過小評価していた。

この問題により、適切な洪水防護手順を確立するというTech. Spec.要件への適合違反となった。事業者は、詳細情報を追加するための洪水手順書の見直し、当該手順書に関する訓練の実施回数の増加、並びに、機器の配備、及び機器が指定の場所にあることを確認するための定期的な予防保全活動の策定を含む是正措置を実施した。

Sequoyah-1/2(WH-PWR)、Watts Bar-1(WH-PWR)、Browns Ferry-1/2/3(BWR/4)
2009年7月28日、TVAはSequoyah発電所、Watts Bar発電所、及びBrowns Ferry発電所の上流域に存在するダムの能力を予測するコンピューターモデルの矛盾が、推定最大洪水(PMF)の設計基準解析に影響を与えていたと判断した。その問題の訂正により、PMF事象時に高水源位置でのダム放水路からの水流が少なくなり、この結果、影響を受けるダムの土製部分で越流が発生する可能性があることが特定された。ダムの土製部分で越流が発生すると当該ダムは決壊したとみなされる。この結果、TVAは3発電所におけるPMFの水位が当初の設計基準を超過する可能性があると断定した。2013年4月8日、TVAはこの問題が解析されていない状況であることから報告対象であると判断し、影響を受けた3サイトについてNRCにLERを提出した。本事象の根本原因としては、コンピューターモデルのエラーが検知されないままで放置されたことに見られる、設計基準解析への過信である。その他の要因としては、洪水防護プログラムが重要な安全系を防護することを保証するための正式なプロセス管理が確立されていなかったことである。現在NRCはBrowns Ferry発電所における問題に関する状況について審査を行っている。

Three Mile Island-1(B&W-PWR)
2012年8月2日、NRCが暫定検査要領(TI)2515/187「短期タスクフォース勧告2.3洪水現場調査 」に従い、発電所における事業者による現場調査 を観察していたところ、空気取入トンネル内のいくつかのコンジットのカップリングが性能要件を満たしていないことを確認した。空気取入トンネルは安全関連換気系に空気源を提供し、その中には安全関連及び非安全関連の電気コンジットが含まれている。設計に従うと設計基準洪水事象に対する防護を提供するためにシール剤を使用して取り付けられるはずであったカップリングに、湿潤環境に曝された形跡があり、シール剤が使用されていなかったことを示唆していた。最終的に事業者は、43個のカップリングにシール剤が使用されていなかったと断定した。2010年に実施された包括的レビューにおいても、事業者は設計時点での問題を特定していなかった。洪水に対する適切な防護(洪水シール)がないために、コンジットを通じて全ての洪水バリアを洪水がバイパスし、崩壊熱除去機器の機能に影響を与える可能性があった。事業者は、洪水バリアの機能を復旧させるための追加の土嚢及び土木機器の配備を含む補償措置を迅速に実行した。事業者は、関連するケーブルコンジットに対する耐水性を有した性能要件を満たすシール剤の使用によるコンジットのシールを含む恒久的な是正措置を実施した。

R.E. Ginna(WH-PWR)
2013年5月29日、事業者がNEI 12-07に従った洪水現場調査 を実施していたところ、複数ある蓄電池室の1つにつながる貫通部がシールされていないことを発見した。事業者はマンホールにあるドレン によりシールされていない貫通部の高さまでに水位が到達することはないと判断したものの、NRCは当該ドレン が保守または試験プログラムに含まれていないことから、ドレンの性能について疑問を呈した。事業者はその疑問への対応としてドレンの試験を行ったが、洪水がシールされていない貫通部に達して蓄電池室Bへ浸水することを防ぐために必要な排水能力がないと判断した。蓄電池室Aについても蓄電池室Bとの間にある防火戸が水密性を有していないために浸水する可能性があった。外部電源が喪失し、サイトへの全てのAC電源が喪失することで、復旧不能なSBOに至る可能性もあった。1983年に事業者は旧型炉安全性再検討計画の一環として、追加的な外部洪水事象を含めるために設計基準を変更し、洪水防護水位についてはマンホール高さ以上の水位とすることで事業者は合意した。事業者はマンホールを通じた浸水の可能性を評価せず、このため、新たな水位以下の位置にあるケーブル貫通部をシールしなかった。事業者は、マンホールと蓄電池室の間の双方の貫通部への恒久的な静水圧型シールの取り付けを含む是正措置を実施した。

Monticello(BWR/3)
NRCは2012年9月12日から2013年5月15日にかけて、発電所において実施された検査で、安全解析書更新版(USAR)でPFM事象からの防護のためにクレジットがとられている12日間での洪水防護活動の実施を裏付けるように洪水防護手順書が維持されていないことを指摘した。検査官はTI 2515/187に従い事業者による洪水現場調査 を観察していた際にこれを発見した。事業者は2001年に実施された独自の工学評価を引用し、USARで規定されている12日以内で防護対象エリアに対する洪水緩和措置が実施可能であると考えていた。しかし、事業者は手順書にある活動の実地検証を行っておらず、このため、洪水計画の脆弱性を特定していなかった。NRCは、当該評価に従い、作業人員が2名で、サイト内に必要な全ての資材があることを仮定すると、サイトの脆弱箇所への擁壁(bin wall)の建設には12日間が必要であると指摘した。擁壁資材の調達を含めると、擁壁の建設期間は合計25日であると評価で示されている。作業人員2名による堤防の建設期間は12日間まで削減されたものの、事業者は日数削減を裏付けるための活動を行っていなかった。事業者は詳細情報を追加するための手順書の改訂、及びUSARで規定されている時間内で擁壁を完成させるために必要な資材の事前配備を含む是正措置を実施した。

Point Beach-1/2(WH-PWR)
2013年3月、NRCは、発電所の事業者が最終安全解析書(FSAR)で規定されている外部での波の遡上防護設計機能を実施するための手続要件を確立していないことを指摘した。検査官はTI 2515/187に従い事業者による洪水現場調査 を観察していた際にこれを発見した。洪水防護手順書は洪水からタービン建屋及びポンプ建屋を防護するために、コンクリート製バリア(jersey barrier)の設置を指示していた。事業者が洪水現場調査 を実施していたところ、防護が必要なエリアを網羅するために十分な数のバリアが用意されていないことが判明した。更に、バリアを設置すると個々のバリア間やバリアと地面の間に隙間ができるが、手順書には隙間やバリアの開口を埋めるために土嚢の使用について規定がなかった。また事業者はバリアを設置するために必要な時間を考慮していなかった。事業者は開口を取り除くための既存のバリアの改修、土嚢を用いるバリアの取り付けを指示するための手順書の見直し、及び追加の土嚢及びバリアの事前配備を含む是正措置を実施した。

Dresden-2/3(BWR/3)
2012年8月、NRCがNEI 12-07現場調査 の一部としての事業者による洪水防護手順の実施に関するシミュレーションを観察していたところ、手順書が原子炉冷却系(RCS)のインベントリ喪失について考慮していないことを指摘した。手順書では4日間の浸水を想定していたが、その間にRCSへ給水能力及び補給水能力を提供する系統が冠水し、利用不可となる。事業者の計算では原因不明のRCS漏えいに関するTech. Spec.の最大許容量として5gpmを想定していたが、特定された漏えいによるインベントリ喪失(最大で20gpm)については考慮していなかった。そもそも事業者の対応方針は、Tech. Spec.で許容されるRCSの漏えい率に対して、RCSインベントリを有効燃料長より高い位置に維持するための手法を提示していなかった。事業者は、原子炉容器の補給水能力が制限される場合でも特定された漏えい源が原子炉容器の水位に影響を与えないように、補給水能力を提供し、原子炉再循環ループを隔離するための手順書の見直しを含む是正措置を実施した。

Fort Calhoun(CE-PWR)
2009年9月に実施された機器設計基準検査において、NRCは発電所の事業者が外部洪水事象時に取水建屋及び補助建屋を防護するための適切な手順書を維持していないことを指摘した。当該手順書では、USARに記載される洪水の水位からプラントを防護するために、水門の上に土嚢を積み上げることを規定していた。検査官が発電所職員に本手順書を実演するよう尋ねたところ、静水頭5ft(1.5m)に耐えるために必要な十分な数の土嚢を設置できるほど水門上部の面積が広くなかったために、記載通りに手順を実施することができなかった。手順書が不適切であった原因は、事業者が外部洪水に関する新知見を入手した際に適切な是正措置を実施する機会を逃したことにある。事業者が状況の範囲についてレビューを行っていたところ、認可基準洪水位より低い位置にある貫通部がシールされておらず、異常洪水事象が発生した際に取水建屋が脆弱になる可能性があった。事業者は、手順書の見直し、土嚢の使用を必要としないような洪水防護機能の再設計及び取り付け、並びに、関連する貫通部のシール施工を含む是正措置を実施した。

Arkansas Nuclear One-1/2(B&W-PWR及びCE-PWR)
2013年3月31日、1号機の主発電機固定子を移動するための仮設の吊上げ装置の崩壊の結果、消火水系統が破断し、補助建屋の床プラグを通じた水の漏えいが発生し、床ドレン 配管から安全関連の残留熱除去室Bに水が蓄積した。本事象はNRCによる福島関連命令に対応するために事業者が洪水緩和機能を評価していた時期と重なる。本事象に対する事業者による状況の範囲に関するレビュー及び洪水緩和対応において特定された矛盾点により、洪水に対して効果的にシールされていない多くの経路が補助建屋及び非常用ディーゼル燃料貯蔵建屋において確認された。このような状態はNEI 12-07に従う事業者による初期の洪水現場調査 では発見されなかった。
1号機及び2号機の補助建屋及び非常用ディーゼル燃料貯蔵建屋が設計基準洪水時に安全関連機器を防護するように設計、建設、維持管理されなかったことが本事象の全体的な原因である。洪水バリアに関する情報が不十分であり(最新の情報が反映されていない)、洪水防護現場調査 を実施していた請負業者に対する管理が不十分であったために、現場調査 においてシールされていない貫通部を発見することができなかった。事業者は、重要な洪水防護機能のレビューの再実施、以前に特定されなかった洪水防護機能の特定、実施されなかった現場調査 の完了、及びNRCへの訂正した情報の提出を含む是正措置が実施された。本事象では内部溢水事象により外部洪水に関する脆弱性が発見された。


背景:
関連するNRC一般通達文書
NRC IN 2012-002「PRA におけるダム決壊頻度スクリーニング値が保守的でない可能性」(2012年3月5日付)。NRCは、事業者による外部事象を対象とした確率論的リスク評価(PRA)において参照されている可能性がある1980年代の文献に示されるダム決壊頻度のスクリーニング値が保守的でない可能性を注意喚起するために本INを発行した。

NRC IN 2009-006「浸水防護機能に関する建設経験」(2009年7月21日付)。NRCは、不適切な洪水防護機能に関する建設関連の運転経験を注意喚起するために本INを発行した。

NRC IN 2007-001「水密バリアに関する最近の運転経験」(2007年1月31日付)。NRCは、要求性能を満たさない水密バリアによる、安全関連機器を有する空間への浸水の可能性について注意喚起するために本INを発行した。

NRC IN 2005-030「未解析の内部溢水及び不適切な設計による安全停止への悪影響の可能性」(2005年11月7日)。NRCは、内部溢水リスクを効果的に管理することを保証するために、NRC要件及び効果的なリスク管理の原則に従い発電所の溢水解析及び設計を確立し、維持することの重要性を通知するために本INを発行した。

NRC IN 2005-011「シールされていない機器ハッチの床プラグ及び/もしくは床ドレン の閉塞による安全系機器の内部フラッディング/スプレイ」(2005年5月6日付)。NRCは、(1)水密ではない機器ハッチの床プラグ、及び(2)FSAR及びプラントの設計基準計算において洪水影響を緩和するためにクレジットがとられている床ドレン の閉塞、による安全関連機器の被水の可能性について注意喚起するために本INを発行した。

NRC IN 2003-008「シールされていないコンクリート床のひび割れを通じた潜在的な溢水」(2003年6月25日付)。NRCは、シールされていないコンクリート床のひび割れを通じた消火水の浸入による安全関連パネル及び機器を含む空間における溢水について注意喚起するために本INを発行した。

NRC IN 1994-027「局所的な溢水による施設の運転上の問題」(1994年3月31日付)。NRCは、局所的な溢水による緊急時計画、機器の性能、及び放射線管理の問題について注意喚起するために本INを発行した。

解説:
本INで提示した事例は、外部洪水の影響を防止または緩和する機器、手順書、及び解析の不備に関する運転経験である。これらの問題は、該当するサイトが洪水事象の影響に対して脆弱であった期間に発生していた。提示した事例には実際の洪水事象(例:St. Lucie発電所)や外部洪水に対する潜在的な脆弱性を示した事象(例:ANO発電所)が含まれている点に注意すること。いくつかの事例は、報告書「福島第一事故からの知見に対する短期タスクフォースによるレビュー」で指摘している潜在的なクリフエッジ効果の存在を示唆している。他の事例では、現行の認可基準洪水以下の水位であっても問題が存在することを示唆している。これらの原因には、当初の設計要件に適合していなかったこと、発電所の設計基準を維持していなかったこと、洪水影響を緩和するための手順書を実行できなかったこと、不適切なバリアの管理プログラム、不適切な洪水防護プログラム、及び不適切な設計基準洪水事象影響のモデル化が挙げられる。いくつかの問題はサイトの是正措置プログラムに登録されていたが、適切に解決されていなかった。いくつかの事例では、安全関連機器及び構築物への洪水事象の潜在的な影響について事業者が適切に理解していなかった。ここで議論している事例は、得られた知見を強調する運転経験の一部であることに注意すべきである。本INで明確に議論しているわけではないが、性能要求を満たさない外部洪水防護に関する問題がほかにもある。
本INで議論している事例は、効果的な洪水防護プログラムの重要性を照らし出している。10CFR Part 50附則A一般設計基準2「自然現象に対する防護の設計基準」は、安全上重要な構築物、系統、及び機器が安全機能を遂行する能力を失うことなく洪水等の自然現象の影響に耐えるように設計されることを要求している。
10CFR Part 50附則B基準V「設計管理」は、認可で規定される規制要件及び設計基準が仕様、図面、手順書、及び指示書に反映されることを保証するための方策を確立することを要求している。

一般的な知見:
洪水防護の脆弱性は原子力発電施設に対する重大なリスク因子となりうる。洪水防護の脆弱性により、安全関連機器及びサポート機器の複数トレインが同時に機能不全となる可能性がある。また日本の福島第一発電所に影響を与えた2011年の地震及び津波が証明したように、運転員による復旧活動に重大な影響を与える可能性もある。2012年、NRCは全ての運転中発電所の事業者に情報提出要求を発行し、想定ハザードの妥当性を確認することを目的とした洪水ハザードの再評価報告書の提出、及びハザードに対する防護能力を確認するための踏査の実施を要求した。事業者は2012年11月までに踏査を完了させ、NRCが追跡検査を実施した。現在NRCは、更新されたハザードに対して追加的な防護を要求する規制活動の必要性を判断するために、これらの活動の結果を審査している。
添付資料 なし

国内対応

BWR 国内BWR プラントではすでに新規制基準対応の中で敷地周辺に川,池,海等がある場合の対策を検討中であるため,本INを受けて新たな対応は不要と考える。
PWR 国内PWRプラントでは、新規制基準において、溢水により安全機能が損なわれないことが要求され、それらの対策がとられている、もしくはとられることより、新たな対策の必要はない。
しかし、本情報は米国における洪水事象に対する緩和能力の低下事例を複数記載した有用な情報と考えられるため、参考情報としてPWR電力各社で共有している。