【登録日】
2010/08/10
【更新日】
2012/03/06
更新履歴

基本情報

通番 111 報告書番号 2010-原燃-T007 Rev.3
情報区分

トラブル情報

報告書状態 最終報告
事象発生日時 2010年 07月 30日 22時 30分 事象発生日時(補足)
会社名 日本原燃株式会社 施設名 再処理
件名 分離建屋 高レベル廃液濃縮缶内の温度計保護管内への高レベル廃液の漏えいについて
国への法令報告根拠 再処理規則19条の16 第03号 国際原子力
事象評価尺度(INES)

原因・概要

事象発生時の状況 7月30日、分離建屋の管理区域における高レベル廃液濃縮缶の温度計交換作業において、22時30分頃、作業のための養生シート上に区域区分(α:0.4Bq/cm2、β(γ):4Bq/cm2)を超える放射性物質の付着(最大β(γ):約710Bq/cm2)を確認した。
その後、付着した放射性物質の発生源の調査を進めたところ、高レベル廃液濃縮缶内の温度計保護管内へ高レベル廃液が漏えいしている可能性があることから、本件は「使用済燃料等を限定された区域に閉じ込める機能の喪失」に該当するものと考え、8月2日13時10分に「使用済燃料の再処理の事業に関する規則」第19条の16第3号に該当すると判断した。
なお、管理区域内の放射線状況に異常はなかった。
また、本事象による周辺環境への影響はなかった。
原因調査の概要 1 損傷状況調査
発生している事象を把握するため、高レベル廃液の漏えいが発生した保護管及びその保護管に挿入されていた温度計を対象とした現品調査及び現品調査の結果を裏付けるための模擬試験による確認を行った。

(1)現品調査
現品調査にあたっては、濃縮缶で既に放射性物質を取り扱っていること、セル内に濃縮缶が設置されており、セル壁外表面から保護管先端までの距離が約12mあるなどアクセスが非常に
難しい場所であることを考慮し、実施可能な調査を検討し、保護管内の液量、液の浸入状態、損傷箇所、損傷の大きさ、保護管の残肉厚について調査を進めた。

保護管に対する調査の結果、以下のことが確認された。
・保護管内に漏えいしている液量は約7cm3と推定される。
・液面は溶接部の下方にあり、液は黒ずんだもので、液外周部は茶褐色であった。
・溶接部付近及び上下のシーニング加工部には液垂れの痕跡は確認されなかった。
・損傷箇所、損傷の大きさの調査のために実施した圧力降下確認において、圧力降下は確認されず、減圧による液浸入確認において、液の浸入は確認されなかった。
・保護管底部の残肉厚確認において、下部保護管の底部の残肉厚は設計値を下回っていた。

温度計に対する調査の結果、浸入した廃液による温度計の腐食等は確認されなかった。

(2)模擬試験による確認
現品調査の結果を裏付けるため、「液垂れ確認」、「保護管への液浸入量等からの損傷の大きさ評価」及び「廃液浸漬による温度計表面状態の変化の確認」の模擬試験を実施した。

(3)調査結果に基づく評価
保護管及び温度計の調査結果及び模擬試験による確認から、保護管の損傷状況等に係る評価を以下に示す。
・漏えい箇所は、保護管のキャップ部である可能性が高いと考える。
・損傷箇所の大きさは約30μm 程度以下。損傷箇所が塞がっている可能性は否定できない。
・下部保護管の底部では上部、中部保護管の底部と比較して腐食が進行していることが推定されるものの、全面腐食により損傷に至るような状態ではないと考えられる。

2 要因分析
保護管内への漏えい事象に対する要因分析を設計、製作・施工不良、使用環境の観点で実施した。

設計の観点での腐食に対する考慮のうち、肉厚の設定に対する考慮に係る調査において、設計当時の知見として腐食に影響する成分を考慮した腐食試験は実施されているものの、その時点ではネプツニウムが腐食に影響を与えるという知見がなかったことから、ネプツニウムの影響を考慮した再確認が必要であることを確認した。

設計の観点で洗い出したその他の要因及び製作・施工不良の観点で洗い出した要因に対する調査の結果、問題ないことを確認した。

使用環境の観点で洗い出した要因に対する調査の結果、温度上昇により鍛流線(鍛鋼品における圧延や鍛伸方向)に沿ったトンネル腐食が発生する可能性があることを確認した。

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事象の原因 ・漏えいが発生した箇所は、キャップの溶接線付近または上下のシーニング加工部の可能性は低く、キャップ部である可能性が高い。
・また、キャップ部に損傷が発生した原因は、要因分析に基づく調査の結果、析出物の発生が濃縮缶内の対流に影響し、想定した以上の濃縮缶下部温度の上昇が発生したことにより鍛鋼品であるキャップ部でトンネル腐食が発生したものと推定する。
事象の種別 火災に該当しない事象

再発防止対策

再発防止対策 1 保護管損傷の復旧措置
・当該保護管復旧の方策として、保護管内、濃縮缶内は極めて高い放射線環境下のセル内に設置されており、人がアクセスして直接保修を行うことができないことなどを考慮し、技術的成立性の観点で復旧方策の比較を行い、当該保護管復旧の方策として、加圧方式を採用することとした。
・保護管内の圧力は、圧縮空気供給元である一般圧縮空気設備からの圧縮空気の供給停止があった場合や設備の保修時に
も濃縮缶内からかかる圧力より高くなるように管理する。
・圧縮空気の供給停止、保護管の損傷箇所の腐食の進展等を想定しても保護管内に液の浸入が発生しないことなどを評価及び実規模試験により確認した。
・加圧方式の機能が期待できないような状態を想定して、仮に保護管内に高レベル廃液が浸入した状態に対する安全性評価を行った結果、当該加圧方式の安全設計は妥当であることを確認した。
・保護管の損傷が進展し、保護管内の圧縮空気の流れが大きくなった際には、温度計測へ影響を及ぼすことから、温度計指示値に対する補正等の圧縮空気の流量に合わせた対応方法について検討を行うこととした。
・加圧システムの圧縮空気の圧力及び空気流量の変化を監視することにより、圧縮空気の流量等の変化の様相が明らかに異なる場合(急激に流量が増加することを想定)には、トンネル腐食の進展とは別の要因が考えられるため、保護管内部の状態を調査・確認することとする。

2 濃縮缶下部の温度上昇に対する対策
・濃縮缶下部の温度上昇の抑制として、先行施設でも実施している定期的な洗浄運転を行う。これにより、析出物を再溶解させるとともに濃縮缶から払出す。
・濃縮缶の温度管理として、濃縮缶全体の温度状態を把握する目的で、3本の温度計の指示値により管理を行い、3本の温度計の平均値が55℃に達した場合には、温度を下げるための操作(減圧度を深くする操作または減酸運転)を行うこと、さらに濃縮缶温度が65℃を超えた場合には、濃縮運転を停止し、減酸運転、冷却などの操作を行い、濃縮廃液を払出す。濃縮液を払出し後、洗浄運転を行う。

3 類似機器での類似事象の発生防止
今回の事象の直接的な原因である、濃縮缶下部温度の上昇を踏まえ、腐食環境の観点から、類似事象の発生防止に係る調査を実施した。また、当該保護管が損傷した直接的な原因ではないものの、設計時に腐食への影響の知見がなかったネプツニウムに対する腐食への考慮ができなかったことを受け、他の設備においてネプツニウムの影響による類似事象の発生の可能性についての調査を併せて実施した。

一方、今回の原因ではないが、トンネル腐食を誘発するような厳しい腐食環境では、全面腐食の観点でも機器に及ぼす影響についての評価が必要である。

0.2mol/L以上の硝酸溶液に接する機器のうち、常時接液するステンレス製の機器を対象として調査を行い、予防処置が必要な機器の抽出を行うこととした。

抽出作業の結果を受け、実施する予防処置に係る考え方は以下のとおり。
・トンネル腐食が生じる可能性があると判定された機器等については、その部位の温度を管理する措置を検討することとする。
・全面腐食の観点で、腐食代以上の全面腐食が生じる可能性があると判定された機器等については、減肉管理を検討することとする。

また、当該濃縮缶と同じ設備である長期予備については、腐食環境緩和の対策を実施するが、念のための対応として、長期予備はセル内に人が入って作業が実施できることを考慮し、保護管に対して、二重管方式等の他の方策についてモックアップにより検証を実施した上で対応を検討することとする。

さらに、今回の漏えい事象に鑑み、腐食に関するデータの拡充を図るとともに、今回の温度計保護管内部のように、アクセスが困難な箇所の損傷検出手法、損傷箇所の保修手法等について、長期的視点に立った当社の自主的活動として技術開発を進めていくこととしたい。

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水平展開の検討 対象外

分析用情報

外部への放射能の影響 なし
保安規定違反 なし
検査指摘事項の
深刻度(SL)判定結果

参考資料

添付資料